天津」タグアーカイブ

視えない中国

『世界』2024年12月号の特集1は「視えない中国」。この特集寄稿の中では、現在の中国社会を象徴する言葉が多数紹介されていたので、メモを取ってみました。27年前の夏に一度中国へは旅行したことがありますが、その当時は都市でも男性だと上半身下着か裸の人がかなりいましたので、ずいぶん変わったとは思います。
これらの言葉を一つひとつ追ってみると、序列化された生きにくい社会で懸命に生きる中国の若者たちの姿が見えてきます。日中両国の若者同士では理解し合える部分も多いのではという気がします。
献忠…社会に不満を持ち、無差別に攻撃したり殺したりする報復行為の隠語として近年ネット上で用いられているという。明末の農民蜂起軍のリーダーの一人で大規模な殺戮を好んだとされる張献忠の名に由来する。なお、中国の代表的な検索エンジン百度では禁句扱いのため隠語としての説明は表示されない。
焦慮…文字通り、焦っておもんばかるという意味。熾烈な進学競争が続く教育分野で頻繁に使われるという。中学生の親の64%が子どもの教育に関して焦慮していると回答している国の報告がある。
関鍵的時刻…この進学勝ち抜きレースを走る人生を若者たちが振り返って風刺した言い方で、重要な時を意味する。人民日報健康アプリによると、中国のうつ病患者数は9500万人に上るが、うち24歳以下が65%を占め、若者のうつ病増加が深刻な問題となっている。
i人…内向的な人を意味する新語。英語のintrovert(内向型)が語源。都市部で働くホワイトカラーの若者たちは仕事に疲弊して日本の若者同様に繊細だという。
社恐…社交恐怖症。i人よりもこちらはマイナス感や少数派感が高い。
社畜…過労死とともに日本発の言葉が近年中国でも使われている。24時間対応の激務と、どんな要求にも笑顔での対応を強要される尊厳のなさも加わった表現とされる。
九九六…朝9時から夜9時まで週6日間の長時間勤務を意味する。
碼農…デジタル小作農の意味でプログラマーを指す。英語ではcording peasantsとなるが、類語でIT農民工もある。
打工人…ホワイトカラー(中国語では白領:白い襟の人)が使われるだけの労働者(=雇われワーカー)の意味を込めて自嘲的に付けた呼び方。
内巻…競争で他に遅れをとるまいと焦燥感にかられた受け身の努力の意味。効果のない過度の競争を表現したものでもある。
牛馬…牛や馬のように従順に黙々と働く若者が自分たちのことを指して使っている新語。
新業態労働者…ライドシェア運転手(1300万人)やフードデリバリー(1200万人)のようなギグワーカー(8400万人)のこと。中国語では霊活就業とも言われる。
鉄人三項…ギグワークを代表する、フードデリバリー、宅配員、ライドシェアの3業種をトライアスロン(鉄人)3種目になぞらえている。
中年失業三件套…フードデリバリー、宅配員、ライドシェアの3業種は、解雇されたアラフォー男性が従事することが多いため、中年失業3点セットと言われる。
作自己…自分らしく生きるの意。
找回自己…本当の自分に帰るの意。

思考能力について

初等・中等教育の公立学校経営者あるいは教員出身の教育委員会勤務職員と接すると、しばしば仕事への取り組み方に疑問を覚えることがあります。
本日、教育委員会から自宅へ届いた文書は、ある委員会への出席を求めるものでしたが、それは私を委員として委嘱することが決定していて差し出したものなのか、委員選出母体代表者宛に構成員のだれかに出席を求めて送り付けられたものなのか、はなはだ意味不明でした。前者であれば、あて名を私宛にすべきですが、そうではなく、文書中に別紙参照とある委員リストと思われる別紙自体も同封されておらず、内部の文面・送付内容物チェックが疎かである実態が浮き彫りになっていました。もともと委嘱の相談もないのですから、送付はなんでと思うばかりです。後者であれば、私の自宅へ送るのが間違いで、選出母体となる機関の事務局を通じて依頼するのが本来の手順です。
別のエピソードも記しておくと、前校長時代にいじめ重大事態が発生したことのある学校を昨年一度訪ねて懇談した際に、校内のいじめ防止対策委員会は外部委員も入れて基本方針通りに開いているか尋ねたことがありました。そしたらコロナ禍を都合良く言い訳にして外部委員を入れて開いていないことを後任校長が答えてくれました。子どもたちへは決まりは守りなさいと彼らはいうのですが、彼ら自身が行動するときに根拠法律や要項の理念を理解して動くことはありません。思考能力が欠けているのではとよく感じます。
写真は1997年9月に訪ねた中国・天津の商店街風景。ロバ肉が売られていました。