個人の日常生活や法人の事業活動にあたって、行政書士をうまく使えば、いろんなメリットが生じます。行政書士が取り扱う分野は多岐にわたりますが、代表的なシーンでの活用法をご紹介します。
第1回 行政書士を使って相続争いの発生を未然に防ぎましょう
相続が「争族」とやゆされるように、親族がお亡くなりになったことをきっかけに、相続権を有する遺族が醜い争いを起こしてしまうことがあります。お亡くなりになった方が、遺言を残していなかった場合には、法定相続の割合に沿って遺産分割がなされることが一般的ですが、事はなかなかきれいに収まりません。特にお亡くなりになった方が相当の資産を保有し、あまり資力のない遠い親族が相続人として存在する場合は、分割協議がまとまらず相続が難航します。遺産分割協議が整わなければ、たとえば故人が残した預貯金を引き出すことや不動産の所有権移転もままなりません。こうなってきますと、相続人たちからすれば、故人もなんて罪な亡くなり方をしたのだろうと恨まれ、浮かばれないですね。
さて、それでは相続争いとならないように、故人は生前どうしておくべきだったのでしょうか。最善の方策として、私たち行政書士は、公正遺言証書を作成することをお勧めしています。遺言書には他の形式もありますが、上記のような問題を起こさないためには、公正証書にしておくのがベストです。行政書士が依頼者の希望を踏まえて遺言の原案を作成指導し、公証人役場での公証手続をお世話します。
公正遺言証書を残しておけば、相続人たちにとって負担が大きい遺産分割協議を経ることなく相続が開始できます。依頼者は行政書士を遺言執行者として指名しておくことも可能ですので、相続人同士の仲が疎遠な場合は、その執行手続においても依頼者に身近な相続人に負担をかけることがなくなります。
現在、いわゆる「おひとりさま」の高齢者の方が増えています。配偶者も子も親もおられない方が、お亡くなりになった場合に、日頃行き来がない兄弟姉妹や(その兄弟姉妹もお亡くなりの場合は)甥姪が法定相続人として突如現れてくることがあります。昔の家庭は兄弟姉妹が多いので、甥姪が何十人といるケースも実際にあるようです。遺産分割協議を整えるためには、実印の押印や印鑑証明書・戸籍謄本の取得など、たいへん面倒な実務も出てきます。行政書士が遺産分割協議書の作成を業務として行うことは可能ですが、分割それ自体に争いがあるときは弁護士さんの分野となり介入できません。
「おひとりさま」は一例ですが、遺族に争いを起こさせないためにも、一度行政書士に遺言・相続について相談されてみてはいかがでしょうか。
第2回 行政書士を使って起業コストを節減しましょう
行政書士など専門家に諸手続きを依頼すると、手間は省けるが、コストが高くなるというイメージをお持ちではないでしょか。ところが、行政書士に依頼すると、手間もかからない上に、コストが安くなる手続きというものがあります。たとえば、株式会社を設立する前に定款の公証手続きというものが必要となりますが、この定款公証を発起人が自分で紙の書類で申請するのではなく、行政書士に依頼し電子申請で行うと、手数料を差し引いてもコストが安く済みます。
コストが安く済む理由は、紙の書類の公証には4万円分の収入印紙が必要なのですが、電子公証だと収入印紙代が不要になるからです。似たような話題として、電子手形の普及について見聞された覚えがないでしょうか。紙の手形を振り出す場合には、額面金額に応じた収入印紙の貼付が必要になりますが、インターネットを介する電子手形には収入印紙を必要とされないため、大手自動車メーカーと下請会社間の決済にコスト節減が図れる手段として広まっています。
行政が進める電子申請ですが、個人が電子証明書を使う機会はほとんどないというのが実情ではないでしょうか。個人が電子証明書の準備をするには、まずネット接続のPCがないと始まりませんし、ICチップ入りの住基カードを取得して、そのカードを読み取れる機器を用意して、という具合に何段階ものハードルを越えなくてはなりません。たとえ収入印紙代が不要になるといっても、それ以前に多くの負担を強いられますので、個人による電子公証はまったく現実的ではありません。
そんなに頻繁に起こらない面倒な手続きについては、手馴れている行政書士に投げていただければよいのです。
第3回 行政書士を使って面倒な申請業務を手放しましょう
行政書士は官公署に提出する書類の作成や申請代理を行いますが、その取り扱える種類は1万を超えると言われます。また、制度的に長く続いている申請の取り扱いについては官公署側のぶれは小さいのですが、年々新しく生まれてくる制度等に基づく申請については、官公署職員の取り扱いの相場感が定まらず、同じような申請内容でも許認可の結果が分かれることがあります。行政不服審査にかけるという手もないわけではありませんが、たいていの行政書士は、それ以前に官公署側のぶれを突いたり、依頼者の利益に叶う申請結果に導く補正を行ったりして、依頼者の期待に応える努力をします。
つまり行政は法令通りに硬直的に動いているわけではなく、細部は取り扱う側の相場感で動いているということなのです。行政書士を通さずに申請を行うと、比較する情報や経験がないだけに、自分が受けた結果が正当なものか不当なものか判断することもできません。行政書士を使うと、行政側が気にしている問題点がすぐに洗い出されて、満足できる申請結果を得ることが容易になります。
それと、国や県、市町村など、いろんなレベルで、あまり知らない上に活用もされていない支援制度がかなりあります。行政書士は、こうしたさまざまな支援制度の活用について依頼者をサポートし、申請書類の作成から申請代理まで業務として取り扱うことが可能ですから、ぜひ気軽に使ってみましょう。
第4回 かかりつけの社外ブレーンとして行政書士を使いましょう
行政書士は、会計記帳や議事録作成、著作登録など、他専門士業の隣際分野の業務も数多く取り扱うことができ、法人の業務で発生するさまざまな問題に総合的にアドバイスすることが可能です。法人経営者にとって頼もしい社外ブレーンとしてあるいは必要であれば各種業務の代理人としてぜひご活用ください。