民主主義の後退サインを見落とさない

エリカ・フランツ著の『権威主義』は、民主主義の後退サインを知るうえでたいへん役に立つテキストでした。第二次世界大戦後から今日にいたるまでに登場した世界の権威主義政体を分析してその登場形態から生き残り戦略、崩壊形態について解き明かしています。権威主義体制の政体としては、中国のような支配政党独裁、北朝鮮のような個人独裁、ミャンマーがさらされている軍事独裁などがあります。その独裁体制の継続期間の平均は前述の順となっています。体制の維持には抑圧と抱き込みの両面があります。抑圧一辺倒では体制を転覆させたい人々が多くなるのは当然になります。政党幹部・党員やリーダー親族への恩恵を与えることが抱き込みになりますが、軍事独裁の場合は抱き込み手段が限られ内部に派閥ができやすく、クーデターでさらに体制が変わることが多いようです。天然資源に恵まれた産油国では国民への経済的恩恵が高いため、王族独裁体制が安定している例もあります。権威主義体制ではとても公正とはいえない選挙制度や議会制度を採り入れ民主主義の擬態を見せることが好まれます。まやかしなのですが公正な選挙への参加の権利を奪っている点でそれは人権を蔑ろにしていて支配者と被治者という不平等状態にあると考えるべきです。世界の人口の多くが実はこの権威主義体制下に置かれています。そして、民主主義体制はいつでも後退する危うさもあります。それは抑圧ではないか、それは抱き込みではないかと、一つひとつの事象を丹念に判断する必要があります。