遺言を遺す文化

遺言・遺言執行・死後事務委任等をめぐるWEB研修を受講した際に、講師の方が、日本では大まかにいえば死亡者の約1割が遺言書を作成していますが、英国では55歳以上の64%(英国弁護士会報告書、2014年10月)が遺言書を作成していると紹介していました。なんでも英国では、中世においては遺言を遺さずに死亡することは魂の救済を受けずに死亡することを意味し、聖地への埋葬ができず、財産を領主に没収されるという事態を招き得る、不名誉かつ忌むべき深刻な事態であるという伝統があるようです(『民事月報』2018年11月号)。英国流の考え方では、幸い私は昨年7月に自筆証書遺言書保管制度を利用しましたので、名誉ある死を迎えられそうだと思いました。
それはともかく先に亡くなる可能性の高い人はできるだけ遺された人へ迷惑はかけたくないものです。手間をかけずに相続ができることは、残された人の日常生活にとってどんなに楽なことかと思います。
一方、講師は付言において相続・遺贈を受けない利害関係者の感情を刺激する内容は厳に慎むようにクギを刺していました。遺言者の真意がどうであれ感情的な言葉は盛り込まないのが流儀ということになります。私の場合は、一切付言を入れませんでした。
遺言書に限らず先に逝く人は争いにならないように言葉は発したいものです。