機略を尽くせ

『キッシンジャー回想録 中国』を読み終えました。原書は10年前に書かれたものですが、提言は今も有効だと思いました。現代の指導者は実体験として対立の先にはどのような世界があるのかを知らないため、歴史的視点に立つ洞察力をもっているかどうかが重要です。少なくとも周囲にそうしたブレーンがいればいいのですが、気がかりです。米国の場合は、少なくとも8年に1回は政権が代わります。今回のように政党も変われば最初の9か月間は見習い期間だと、同書の著者は記していました。
以下に読書メモを示します。

中国の特異性
1.長い歴史を持つために、過去の出来事や教訓から物事を判断する。
2.自らを世界の中心であり卓越した存在と考える。
3.時間の観念が長く、長期戦略による相対的な優位を追求する。
4.西欧流の近代化は中国の文明や社会秩序を損なうと考える。
5.本能的に自立更生、自給自足の独自性を主張する。
6.侵入した異民族を中国化させるような文化力や忍耐力を持つ。
7.事物は流動的、相対的であり、矛盾や不均衡の存在は自然と考える。
8.完全な征服より調和を、直接的な勝利より心理的優位を狙う。
9.米国とは異なり自らの価値観を世界に広めようとはしない。

米中関係に求められるのは相互進化
両国ともに可能な領域では協力しながら自国の課題解決に取り組み、対立を最小限に抑えるように互いの関係を調整する。機略を尽くすのをやめ、衝突(あるいは対立)してしまえば世界はどこに行き着くのかにについて自問する必要がある。協議と相互尊重の責任がある。

表紙写真の本は、今度読む予定です。中国国内のモンゴル人に対する文化的ジェノサイドについても目を向けるべきだと思います。文革当時の中国は、文字の読み書きができない国民がかなりいましたが、現在は教育水準の高等化だけでなく、同化政策が進められています。