幻想

E・F・シューマッハーの『スモールイズビューティフル再論』(講談社学術文庫、1180円+税、2000年)のp.32-33に私たちがごまかされやすい3つの幻想が記されています。
引用すると以下の通りです。
第一に、安価な燃料と原料が無尽蔵に供給されるという幻想
第二に、ごく低い報酬で、退屈で機械的でうんざりする仕事をあえてやろうという労働者が、これも同じく無限にいるという幻想
第三に、科学と技術がやがて、もうすぐすべての人を豊かにするので、余暇と財産を一体どうあつかうかという問題だけが残り、他の問題が消滅してしまうだろうという幻想
さすがに、これが書かれた時代は50年ほど前になるので、現代の視点からはかなり楽観的で、もっと危機感はあるだろうとは思いますが、どうしても見たくないものは見ないという人からすると、今も通用する話かもしれません。
ところで、著者は1955年、当時は英国石炭公社に勤務中でしたが、3か月間のビルマ(現ミャンマー)連邦政府経済顧問就任の委嘱を受け、これを引き受けます。ビルマでは直ちに仏教寺院に身を寄せます。そこではビルマ人が欧米流の経済開発を必要としないことを見てとります。そのときの経験が現代経済学に対する仏教経済学という独自の考えに発展していきます。著者の考えによれば、現代経済学は、消費が経済活動の唯一の目的であり、土地・労働・資本といった生産要素をその手段と見ます。適正規模の生産努力で消費を極大化することが目的となります。これに対して仏教経済学は適正規模の消費で人間としての満足を極大化することが目的となります。地域の必要に応じ、地域でとれる資源を使って生産をおこなうのが、もっとも合理的な経済生活ということになります。消費に対する考え方がまったく異なります。天然資源のすべてについて可能とはならないにしても傾聴に値するものがあります。