円筒印章とイシュタル門

髙橋和夫著の『改訂版 国際理解のために』を読み進めています。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は、実は兄弟宗教であり、聖地はいずれも中東です。そしてこの三つの宗教に影響を与えたのが、ゾロアスター教で、それはアケメネス朝ペルシア帝国の支配下で広がりました。この帝国の統治方法は現代の視点からみても非常に注目すべき点があります。それは、信仰の自由を保護した点です。そのことにより被征服民の反抗が生まれず、経済が発展し、帝国が長続きすることとなりました。この時代を象徴する遺物として「キュロス大王の円筒印章」があります。信仰の自由を保障する内容の勅令が刻まれていて、現在のイラン人が世界最古の人権宣言として誇るものですが、実物は大英博物館にあるのを見たことがあります。実に見ごたえがあります。さらに帝国の遺物としては現代のイラクに建設されていた「イシュタル門」が著名ですが、これも実物はドイツ・ベルリンのペルガモン博物館にあります。同館を訪れてそれを眺めたことがありますが、壮麗なレンガに圧倒されます。いずれも2千数百年前の文化の中心はオリエントにあったのですが、その栄華を物語る痕跡はヨーロッパの博物館に収まっているわけです。