混迷する隣国を知る

岡本隆司著『「中国」の形成』(岩波新書、820円+税、2020年)の読書メモを残しておきます。
・「因俗而治」という対症療法を通じた多元共存ではあったが、清朝は明代のカオスに学び東アジアの多元勢力をとりまとめて一定の平和と繁栄をもたらした。
・歴史をたどると、「一体」の「中華民族」は存在しない。元来「多元」なのであるから、「多元一体」は「夢」でしかない。
・「中国」のトップにいる習近平国家主席は「中国夢」を唱えているが、その根幹にあるのは「中華民族の偉大な復興」である。しかし、(漢人社会は存在したが)かつて存在しなかった「中華民族」の回復はありえないので、「復興」は現実ではない。「夢」の実現に固執するのは、さらなる混迷を招きかねない。政権の宿命的な弱さともいえる。