昨日、地元の法務局で相続についての研修を受ける機会がありました。主に最近ルールが変更になった制度についての説明でした。
まず、1点目は昨年7月1日より施行となった、「預貯金の払戻し制度」についてです。遺産分割前に相続人の資金需要に対応できるように、家庭裁判所の判断を経ることなく一定の範囲で金融機関に被相続人の預貯金債権の払戻しができるようになりました。しかし、注意を要する点があります。葬儀費用だけのために引き出すのであればよいのですが、引き出したお金を自分のために使ってしまうと、相続を単純承認したことになります。後日、プラスの財産よりも負債の方が大きかったことが分かり、いざ相続放棄や限定承認をしようと思っても、それはできません。ですので、この制度を利用する前に、被相続人の消極財産の有無や金額などを入念に確認しておく必要があります。払戻しは相続人が単独で引き出す前に必ず他の共同相続人の同意を取り付けるようにしてください。引き出したお金を葬儀費用といった遺産から支出しても構わないものの支払いに充てた場合は、必ず領収書を取っておいて、自分のために使ったのではないことを証明できるようにしておくことを勧めます。
2点目は、「法定相続情報証明制度」です。これは、3年前の5月29日からスタートした制度ですが、定着してきているようです。地元法務局管内の18歳以上の人口は9万人弱ですが、直近の3か月間で60件の利用があったということでした。被相続人の預貯金債権のある金融機関が多い場合はこの証明書を作成しておいた方が便利です。何枚もらっても無料です。
3点目は、今年7月10日に始まったばかりの「自筆証書遺言書保管制度」です。こちらは地元法務局管内で半月で3件ということでした。自筆証書遺言書ということで、高級和紙にしたためてこられた申請例があったようですが、スキャンすると紙のでこぼこの影が写るので避けてほしいということでした。遺言執行者に対する遺言者の死亡時通知は、来年の3月からの開始となるということでした。