教育格差がもたらすもの

松岡亮二著の『教育格差』(ちくま新書、1000円+税、2019年)を昨日一気読みしました。信頼性の高い統計情報に基づく説得力のある論証は、読み進めやすい思いがしました。ある程度実感していることですが、教育格差は小学校入学前から存在し、小中高と進むほどに拡大しているという事実が明らかにされています。格差の要因は、親の学歴や文化資本、地域、学校環境となっています。社会経済的地位が高い家庭に育った子どもは、将来、やはり社会経済的地位が高い親になるということが実証されています。つまり格差の再生産が続くというわけです。皮肉なことにそうした実態を知り得るのは、社会経済的地位が高い家庭となりがちなので、たまたまそれが低い家庭に生まれた子どもは、高い教育を受ける可能性を減らされていることになります。著者の考えは、このように子どもの可能性が殺されるのを社会の損失だとしています。たとえ、一学年の1%でもその可能性を救えれば、1万2000人の子どもを救うことになり、社会の平均値が上がることは、全体の利益になると考えています。教育格差があるということは、教員や私のような専門職にも地域格差があることを示しています。まずは、根拠のある事実を認めて少しでも改善することを続けなくてはなりません。