戦後史としての読み方

宮本輝氏の『流転の海』完結を受けて5日の朝日新聞、13日の読売新聞とNHK「ニュースウォッチ9」で本人が取材に応じている記事や放送に接しました。実際に作品を読んでみると、戦後の庶民の暮らしぶりが丹念に描かれています。第9部では中国の文化大革命やベトナム戦争といった当時の国際情勢についても触れられています。主人公の主治医が引退後に水俣へ入って水俣病患者の診察を通じた支援を行っているというくだりもあります。大阪の医師で実際にそうした活動を行った方がモデルとしていたのか、あるいは時代背景を盛り込むための完全な創作なのか、確認していませんが、さりげない数行の記述に作品の深さを感じました。