『調査票のなかの「戦争」 京浜工業地帯の労働者一万四千人の記録から』(勁草書房、3000円+税、2026年)の著者・渡邊勉さんが同書をめぐって報告する「第51回空襲オンライン学習会」(9/26開催)に参加予定なので事前に読んでみました。本書は、横浜・川崎の事業所に勤務する労働者1万4千人を対象にした1951年実施の調査データを数理・計量社会学の手法で分析し、回答者のライフコースを描き出した稀有な著作です。年齢・学歴・職歴・居住歴・結婚歴・家族構成・戦争経験(徴兵・引揚・戦災)などさまざまですが、「戦争とは人びとを選別するシステムである」と結論付けています。たとえば、地方の農民出身者ほど前線へ送られた経験をもつ者が多く、逆に高学歴の軍需産業の技術者ほど前線へ送られた経験をもつ者が少ないといったことが解析できています。戦争で夫を亡くしたり婚期を逸したりするなど、女性労働者の生活にも大きな格差が生じました。戦争による影響は、回答者の子孫の世代にもおそらく格差をもたらしたのではと思います。しかし、何よりも終戦から6年後の調査であるため、当然のことながら戦死あるいは戦災死した者たちの記録はないわけで、死者の声を聴けないことにも思いを向けなくてはならないと感じました。