関山健著『気候紛争 たった「2℃」が起こす戦争』(光文社新書、900円+税、2026年)は、気候紛争の研究が交流した2007年以降に国際的な学術誌に掲載された関連論文を主として参照し、その知見が分かりやすく濃縮されて解説されており、重宝する書籍でした。気候変動に伴う自然災害や社会混乱のリスクはかなりあります。例を挙げると、猛暑・熱波、日照り・干ばつ、豪雨・洪水、台風、高潮、海面上昇、水不足、食料不足、健康被害があります。雨が降らない一方、降る時は極端に集中して降るなど、その実感は確かにあります。さすがに最近はあからさまな地球温暖化懐疑の言動に接することが少なくなった気がしますが、そうした無知な勢力にあがらうためにも世界的に信頼できる最新情報に接しる機会を確保することが重要だと考えます。
本書で初めて知ったのですが、地球温暖化を防ぐために人工的に太陽放射管理を行う気候工学があるそうです。これはロケットを多数飛ばして成層圏にエアロゾルを散布(注入)するというものです。しかし、地球全体にどのような副作用をもたらすのか不明の点があり、実用には多大なリスクがあります。もしも国際的なルールやガバナンスを無視して強力にこうした施策を実現させようとする指導者がいたとしたら、たいへん怖ろしいばかりです。
他にも「風泥棒」という現象と国家間紛争の可能性についても初めて知りました。風が風車を回すと風速が下がるので、風下にある風力発電所の発電量を低下させるそうです。ノルウェーが北海に計画している100基近い洋上風力発電施設が稼働すると、約22km先の海上にデンマークが建設する発電所と風を奪い合う恐れがあるといいます。紛争を未然に防ぐ政治外交の視点が求められていることを痛感します。