日刊新聞発行もビジネスですから、これは提灯記事だなと読める紙面があります。ですが、7月4日の熊本日日新聞1面コラム「新生面」は、村上春樹さんの新刊小説『夏帆』を取り上げ、その直下に同本の広告が掲載されてました。それを見たら、さすがに興ざめしてしまいました。これだと、タイアップ広告記事そのものです。前日の朝日新聞東京本社版の文化面(26面)には、やはり『夏帆』刊行に際しての村上春樹さんへのインタビュー記事が載っていましたが、さすがにその書籍広告は総合面(2面)の記事下に載せ、一定の配慮はされていました。
「ハルキスト」と称される岩盤読者層に支えられる人気作家とあって、『夏帆』の初版はなんと25万部発行と言います。版元の新潮社からすれば確実に売れる絶対に手放せない作家なんだろうなと思います。
ところで、新潮社と言えば、1年ほど前、『週刊新潮』において外国にルーツを持つ作家に対して差別的な言及がなされたコラムが掲載され、それに傷ついた作家が同社との出版契約を解除・終了する事件がありました。その後の同社の対応をフォローしてないので、この事件を村上春樹さんはどう受け止め、今回の同社からの出版にわだかまりはないのか、知りたいと思いました。しかし、7月3日の朝日と同日の熊日(おそらく共同の配信)のインタビュー記事ではそのことに触れられていません。
それで、新潮社のホームページで関連の情報を探してみたら、「人権デューデリジェンスの新たな取り組みについて──週刊新潮コラム問題をふまえて」という2025年12月25日発表のページを見つけたので読んでみました。これによると、事件を踏まえて2025年10月1日、社内に「人権デューデリジェンス推進室」を設置し、①社内研修体制の強化、②校閲作業の重層化、③社内相談窓口の確立、④ケーススタディの活用、⑤知見のアップデートに取り組み、再び過ちを繰り返さないことが謳われていました。「人権デューデリジェンス(Human Rights Due Diligence)」という用語には、このページで初めて接したのですが、「企業が自社における人権リスクを調査・特定し、これを防止・軽減するための一連の取り組み。」を指すとのことです。おそらく、村上春樹さんも同社のこの姿勢を了として『夏帆』出版(もともと2024年6月号から2026年3月号まで文芸誌『新潮』に4回にわけて掲載されてました…)となったのではないかと思います。
https://www.shinchosha.co.jp/news/article/3351/
実は村上作品に対してはあまり関心がありません。35年前に『ノルウェイの森』を読んだのが最後だったかと記憶しています。宮本輝さんの作品は割と読んだ方で、最近やはり新潮社から『湾』が出たので手に取ろうかどうしようかと思案していましたので、少し安堵しました。それでも版元や新聞社の姿勢はたえず見定めたいと思います。
2026.7.11追記
「ビジネスと人権」に関する行動計画(改定版)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100956579.pdf