『みんなこうして連帯してきた』読書メモ

ジェイク・ホール著の『みんなこうして連帯してきた 失敗のなかで社会は変わっていく』(柏書房、2400円+税、2026年)の内容を示すと、肌の色が異なるとか、身体の外見と性自認が異なるといったことが理由で、不当な扱いを受けている人がいれば、それは自分ひとりだけが闘うべき問題ではなく、同じ思いを持つ世界中の人と連帯して闘っていいんだという希望を持たせる書だと思います。著者自身がイギリスの労働者階級出身のクィアのジャーナリストです。クィアとは、既存の性的指向や性自認の枠に当てはまらない人々を指す総称です。かつては同性愛者に対する侮蔑語でしたが、ゲイ・アクティヴィズムが台頭するなか、当事者がこの言葉が内包する負の歴史を引き受けたうえでその意味を反転させ、みずからを名乗る言葉として使うようになったそうです。
本書で取り上げられる世界に散らばる団結の物語は、実に多彩です。表紙装丁にもその対象が以下のように列記されています。有色の人、障害のある人、肥満の人、ホームレス、先住民、気候変動活動家、労働組合員、移民、難民、セックスワーカー、フェミニスト、ゲイ、レスビアン、トランスジェンダー、ドラッグ・クイーン…。しかもそうした属性が複合し、連帯した闘いもしばしばあったことを明らかにしています。
たとえば、自分の身体の自己決定権は、人権の最たるものの一つですが、先進的な民主主義体制と見なされる国においても意外と尊重されていない例があることにも改めて気づかされます。
「権力者にとっては、悲しみによって動けなくなった世界、すなわち連帯や連帯の構築を無意味な努力とみなす社会のほうが扱いやすい。」(p.343)という指摘にもドキリとします。しかし、「最悪の状況にあるとき、希望が命綱になる。」(p.348)であり、「抵抗のなかには喜びがあるのだ。」(p.349)という言葉に救われます。
本書で取り上げられている当事者の境遇には当てはまらなくても、日々の生活において、たとえば企業や学校のなかで、悲しみによって声を上げられない人は少なくないのではないかと思います。企業や学校の内部にその声を受け止めてもらえる環境がないのなら、ぜひ外部へ発してほしいと思います。
行政組織における公益通報の窓口も内部だけでは忖度が働き機能しないものです。八代市が本日から外部窓口を開設するという報道がありました。他の自治体も見習うべきではないかと思いました。
https://kumanichi.com/articles/2008163