人新世は条件という認識はあるか

元環境大臣の経歴をもつ政治家が、今回の自民党総裁選挙の有力候補者として注目されているようですが、選挙中の発言を追ってみると目先の話ばかりで、たとえば気候変動対策についてどのような外交を展開していくのかという大きな政策ビジョンが聞こえてきません。その人物が現在所管する食料の安定生産についても実際のところは気候変動が大いに関係しています。現在米国大統領を務める老人の場合は、任期が残り3年もないので、地球に暮らす将来世代に禍根が残ろうとも関係ないのかもしれませんが、まだ数十年くらいは政治家を続ける可能性のある40歳代なら少しは頭を使えよと言いたくもなります。
アドリアン・エステーヴ著『環境地政学』(白水社文庫クセジュ、1400円+税、2025年)を最近読んでみました。経済成長至上主義、資源の収奪、植民地支配、自然の支配、男性中心の社会といった近現代の人間の活動が、気候変動をもたらした流れを理解できます。これはグローバルノースの国家に限らずグローバルサウスの国家にも共通する課題ですし、人新世そのものなのだと思います。本書では、さまざまな人物が警鐘を鳴らしてきた歴史、国際的に対応している動きについての情報も紹介しています。コンパクトな著作ながら、人新世の見取り図・現在地を掴むには適した本だと思いました。
これからの地球人にとって必要なことは、領土的枠組みにとらわれず人類共通という考えで、歴史と科学を学び、人新世は条件であるという認識に立つことが重要だと思います。その認識で国際的にリードできる人物の活躍を期待したいと考えます。