#戦争と法 #くまもと戦争遺産の旅
永井幸寿著『戦争と法 命と暮らしは守られるのか』(岩波新書、1060円+税、2025年)を参院選の間に読み終えました。本書は、避けることのできない自然災害に備えた災害救助法と避けることのできる人為災害として最悪である戦災に備えた国民保護法を比較しながら、サブタイトルにもある通り、戦争が起きたら国民の命と暮らしは守られるのかをまず解き明かしています。
戦争では原発事故やサイバー攻撃を始めいくらでも不測の事態の誘発が広範囲・長期間起こり得ます。法律にはもっともらしくご立派な文言が整然と書き込まれています。それにそって国民保護計画がこしらえられているのですが、有事に際してその通りに避難行動できる保証はまったくありませんし、生命・身体・財産に損失・損害があっても国の補償はきわめて限定的にしかありません(民間の損害保険も約款を見れば戦災は補償対象外のはず)。自然災害では自衛隊も救助や避難をやってくれますが、戦争では国(領土)を守るのが自衛隊の仕事であって避難は地方自治体の計画に沿い民間の交通機関等でやってくださいということになります(それこそ自衛隊の車両・艦船・航空機で避難すれば格好の攻撃対象となります)。戦争のリアルを考えれば考えるほど、国民保護法あるいはそれに基づく国民保護計画の空虚さが、本書によって理解できます。
戦争が起これば、いかに国民が守られないかということは、80年前の満州や沖縄であった悲劇の歴史を振り返っても明らかです。本書はそのことも教えてくれます。たとえば、1945年8月8日、ソ連が日本に宣戦布告した際に、満州にいた関東軍は、「8月10日ごろには、一般の日本人には知らせずに、避難の専用列車を確保して、関東軍の家族や南満州鉄道の社員の家族を乗せて避難をさせました。また11日には、官吏家族の避難を指示しました。(中略)関東軍が自分たちやその家族を守るために、住民より自分たちを優先して避難したのです」(p.192)とあります。
戦後、元関東軍作戦主任参謀だった草地貞吾は、「軍は作戦を最優先せねばならない。敵に気づかれず、ひそかに撤退するのも任務なのだ。居留民はそっとしておかねばならないこともある。多少の犠牲はやむをえない。それが、戦争なのだ」(p.193)と語り、図らずも戦争のリアルを示しています。
日本人とか外国人とかを選ばず権力から遠い弱者から先に殺されるのが戦争ですから、何よりも有事に至らしめないための不断の外交や国際交流が必要です。殺されてもそれは「多少の犠牲」の内としか感じない者たちに騙されてはならない、そう決意を固くさせられた良書でした。
「旅のよろこび」の主催旅行「第7回くまもと戦争遺産の旅」(第5回と第6回に私も参加しました)のリーフレット画像も掲載しておきます。