7月19日の朝日新聞オピニオン面「交論」のテーマは、「冤罪救う 再審法改正の道」。本欄に載っている発言では、以下の箇所に注目したので、引用メモを残しておきます。
まずは、袴田事件の再審請求審を担当した経験のある元裁判官の村山浩昭さん。「検察が証拠を出すか出さないかは、属人的なものに左右されます。熱心な弁護人に恵まれ、証拠開示に前向きな裁判官や、開示に寛容、あるいは断りきれず応じる検察官と出会う――こうした偶然が重ならないと冤罪が救済されない現行制度は、もはや制度の名に値しないのです」と語っています。
続いて刑事法研究者の後藤昭さんは、再審手続きを含めた刑事訴訟法の改革について問われて、「この改革はつまるところ、検察官優位の刑事手続きの構造を変えるところにあります。それを乗り越えるのは、専門家でない、世論の力です。専門家同士で議論すると見解が対立し、最終的に法務官僚のコントロール下におさまってしまう。取り調べへの弁護人の立ち会いが認められないのも同じ構図です」と答えています。
司法の手続きであれ、行政の手続きであれ、公権力を行使する担当者の「良心」次第で取り扱いが変わるようでは、公正さを保てません。
市民のための法律専門家といっても、その多くは経済的利益が高く得られる私人間の事件の代理人業務には率先してあたりますが、公権力を相手に人権の回復を目的とする事件の代理人に就く方は手間がかかる割に実入りが少ないので稀少だと日頃感じています。ビジネスだから当然の選択と言ってしまえばそれまでですが…。専門家だからといってお上に楯突いてカネにならない話に口出しする方は多くないので、普通の市民が物申すことは非常に大事だと思います。
さて、7月18日、39年前の福井・女子中学生殺害事件の再審で無罪判決が出ました。その中で、裁判長は、検察側に不利益な事実を隠そうとする不公正な意図があったと指摘しました。証人の1人が事件当日に犯人とされた前川さん(現在60歳)を見た根拠として挙げたテレビ番組の内容が実際は事件から1週間後のものだったことが明らかになっています。証人が述べた「アン・ルイスと吉川晃司がいやらしい踊りをする場面」は、事件当日の番組にはなかったのです。吉川晃司さんも来月60歳を迎えますが、彼の踊りが証人の記憶に爪痕を残してくれたおかげで、検察の不公正が明らかになり、同い歳の前川さんの冤罪が救済されたのです。吉川晃司さんは、もちろんそのことを知るよしもなかったことですが、こうしたことがあったのも事実です。吉川さんを顕彰したい出来事でした。
写真は、7月19日、水俣から見た鹿児島県の長島。