菊池恵楓園歴史資料館見学記

ロアッソ熊本vs.ジェフユナイテッド千葉の観戦の前に、初めて菊池恵楓園歴史資料館を訪ねてみました。場所は、熊本電鉄御代志駅の近くにあり、特に電車旅が好きな私には意外と気軽に行ける場所にあると感じました。電車旅がなぜ好きかというと、本を集中して読めるからです。ましてや地方私鉄の休日の電車ですから混んではいません。楽々座って読めます。逆にマイカーの運転ほど読書のじゃまになる無益な時間はありません。
上熊本駅から北熊本駅で乗り換えて御代志駅へ行くのですが、北熊本駅ではわざと目黒行き表示の青ガエル電車を見ることができます。昔の東急や地下鉄銀座線を走っていた電車が現役で走っているのを見られるのも感動モノです。
それで、本日携行した本は、斎藤健一郎・西上治・堀澤明生編『図録 行政法』(弘文堂、2700円+税、2025年)。今秋に専修大学大学院で受講する行政救済法の予習代わりに買ってみた本です。国家賠償請求訴訟においては、それこそハンセン病の元患者やその家族が勝訴した熊本地裁平成13年5月11日判決、熊本地裁令和元年6月28日判決が代表例ですから、資料館見学の予習にもなりました。
さて、資料館の方ですが、HPから事前予約して行ったのですが、ほぼ貸切状態で見学できました。まず11分か13分のガイダンス映像を見てから常設展示コーナー、企画展コーナーと進みます。常設展示で衝撃を受けたのは、2003年の黒川温泉ホテル宿泊拒否事件のおりに入所者へ匿名で送り付けられた差別と偏見に満ちた手紙です。昨年5月1日の環境相と水俣病患者団体との懇談会のマイクオフ事件があった後に、やはり心ない愚か者たちが匿名で患者団体へ中傷の電話をかけてきたことを思い出して憤りを禁じ得ませんでした。
ひとつ気になったのは、資料館では「龍田寮事件」と称し、恵楓園入所者自治会では「黒髪小学校通学拒否事件」と称している1953~1955年に起きた事件の名称のことです。この事件を題材にした中山節夫監督の映画「あつい壁」(1970年公開)でご存知の方もいるかと思いますが、恵楓園入所者を親にもつだけの患者でもない児童たちが、当時黒髪小学校区にある龍田寮に居住していて、同寮から黒髪小へ通学することを同小PTA・住民からの反対に遭い、拒否されたというものです。
通学に賛成したPTA・住民もいましたが、この不当な差別の歴史を忘れずに伝えていくためには、自治会が称する事件名の方がふさわしいと思いました。なお、国立ハンセン病資料館や厚生省のサイトでは、「黒髪小学校事件」と表記したものもあります。
企画展「戦争と医学 虹波臨床試験の深層」についてですが、当時の所長の関与や他の療養施設や七三一部隊での臨床試験の実態についての掘り下げ方が足りないように感じました。
それと事前に申請すれば園内の一部も見学できました。隔離政策の痕跡を示すものと同時に皇室と園とのかかわりを示す部分もマップや展示にもっと盛り込んでみると深みが増すのにとも思いました。自治会がまとめた年表には皇族の来訪歴が逐次載っていてそのことへの感謝の念の強さ・高さを覚えました。