無知ほど怖いものはない

1月26日の熊本日日新聞「くまにち論壇」欄に北海道大学教授の岩下明裕なる人物が、日本被団協のノーベル平和賞受賞をめぐって以下の通り書いていました。「私は彼らの平和賞受賞スピーチに違和感をもった。政府に原爆被害者への補償を求め、世界にアピールしたからだ。国家の非常事態たる戦争では、皆、被害を受けたのだから我慢せよという、いわゆる受忍論を、彼らは批判したとされる。」。
これを読んで嘆息せざるを得ませんでした。昨年放送の朝ドラ「虎に翼」を視聴した方なら原爆裁判でなぜ原告が日本政府に対する国家賠償請求にいたったか、つまりサンフランシスコ講和条約によって米国に対する賠償請求権を放棄した経緯を、よく承知しておられると思います。しかし、上記の人物はこれぐらいの常識さえも持ち合わせていないようで、思いっきり無知を晒しています。
加えて本欄には「戦争を始めた国や政府の戦争責任を追及するのは当然である。だが、いかに軍国主義下だろうと、(一時期とはいえデモクラシーを経験した国の)戦争責任が100%国民にはないとは言えないと思う。自国政府の戦争責任への責めは国民もある程度は背負うべきだろう(私はウクライナ侵略に対するロシア国民の責任についていつも考えている)。」と続きます。どうやらこの人物には、先記引用文と含めて国策の過ちを国民は受忍すべきとの考えがあるようです。
当時の日本には未成年者はもちろんですが、成年女性には国政に関与する選挙権・被選挙権がありませんでした。原爆に限らず空襲などによる無辜の国民の死傷者数も膨大です。これらの人々にどのような戦争責任があったというのでしょうか。まったくもって怒りを禁じ得ません。
このような不見識な寄稿を載せる新聞社の編集の見解もぜひ聞いてみたいものです。