日頃意識することはほとんどないのですが、私は日本行政書士会連合会が実施する著作権相談員養成研修を履修し、その効果測定に合格した者に付与される「著作権相談員(日本行政書士会連合会)」の一員となっています。その名簿は、公開されていて本年10月15日現在のものを確認すると、熊本県内においては35名の会員氏名が載っています。先日、この名簿情報のグレードアップ化に向けたアンケート回答を求める連絡が、単位会を通じて日行連から届きましたので、久々に著作権について、にわか学習の機会がありました。
とはいえ、著作権は、出願・登録することなく著作物の創作によって自然に発生します。それもあって、著作権を文化庁に登録できる制度がありますが、これを活用する例はあまりありません。ただし、著作権は譲渡も可能です。したがって、著作者が必ずしも著作権者とは限りません。そうした権利関係を対外的に明らかにしておきたいときは、登録の意味はあるかもしれません。
それでは、著作権者が不明な場合の著作物をたとえば複製利用したいときには、どうしたら良いかというと、これは文化庁の裁定制度を利用する手があります。相当の努力を払っても権利者と連絡がとれないことを明らかにしないといけない点に手間がかかりますが、利用が認められれば、しかるべき補償金を支払って利用ができます。大学入試の模擬試験教材を作成する受験産業の企業がこの制度を活用していたりします。
もっとも一般の個人が、著作権登録を行うことはまれですので、著作物の公表後70年を経ていれば、著作権の保護期間はないものと考えていいと思います。保護期間の間であっても、著作権を相続する人がいなかった場合は、保護期間が終了します。間違ってならないのは、著作物は無体物ですが、著作物が印刷された書籍・プリント等の紙は有体物であり、それには所有権があります。著作者が亡くなっていてもさらには著作権の保護期間が終了していても相続人がいれば、書籍等の所有権は存続しています。
最近、戦争ミュージアムの役割に関心があり、そうした場所で戦前・戦中に書かれた文章や撮られた写真に出会うことがたびたびあります。それで思うのは、あくまでも著作権法上の観点だけで言えば、それらおよそ80年以上前に公表された文章・写真等を複製して資料展示することは問題ないと考えます。歴史から得られる教訓は人類共有の財産として広く目に触れることが有益だと思います。
加えて今回のにわか学習では、教育現場での著作物利用に際してかなり注意を要する点が多いと感じました。著作権法第35条には、「教育」における著作権の権利制限が規定されています。「学校」の正規の「授業」での利用目的なら、著作物の複製や公衆送信(注:補償金必要)が認められます。そこで、注意したいのは「学校」に当たらないものとして、営利目的の会社や個人経営の教育施設、専修学校または各種学校の認可を受けていない予備校・塾、カルチャーセンター、企業や団体等の研修施設があります。それと、「授業」に当たらないものとして、入学志願者に対する学校説明会、オープンキャンパスでの模擬授業等、教職員会議、高等教育での課外活動(サークル活動等)、自主的なボランティア活動(単位認定がされないもの)、保護者会、学校その他の教育機関の施設で行われる自治会主催の講演会、PTA主催の親子向け講座等があります。コロナ禍で活用が増した公衆送信においては、教育委員会(公立)や学校法人(私立)が、一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SA RTRAS)に授業目的公衆送信補償金を支払って著作物の利用ができる方法もできています(著作権法第104条の11)。
これらの点は、戦争ミュージアムが実施する平和学習において留意すべきだと思いました。私の気まぐれ取得資格の中に学芸員というのもあるのですが、学習当時にこういった知財関係の法律知識を学んだ記憶がなく、現在の履修課程ではどうなっているのか、このへんもいずれ確認してみたいと思います。