欲があるとすれば、そこいらの政治家よりは、世界のことを普段から知っておきたいと考えています。それと、職業柄、取り扱う可能性のある分野の事情にも精通しておきたいという欲だけはある方だと思います。言わば、厄介な相手がいると分かっていれば、いかにその危険を回避するかが最優先ですし、やむなく相手が切りかかってくればいつでも返り討ちできるよう、常に刃を研いでおく心境です。
それで、実際にどんな本をここ1か月ほどの間に読んだかというと、以下の通りとなりました。
①鈴木一人『資源と経済の世界地図』(PHP研究所)
②中西寛・飯田敬輔・安井明彦・川瀬剛志・岩間陽子・刀祢館久雄・日本経済研究センター『漂流するリベラル国際秩序』(日本経済新聞出版)
③ピーター・ゼイハン『「世界の終わり」の地政学』(集英社) ※上・下巻
④本山敦・岩井勝弘『人生100年時代の家族と法』(放送大学教材)
分野としては、①②③が地政学(地経学)やリベラル国際秩序について考えるもの、④は家族法や社会保障・福祉について考えるものとなっています。もし①②③でどれか1冊を人に勧めるとすれば、③(実際には上下巻なので2冊ですが)を選びます。①は日本の読者向けに書かれている本なので、世界について語るとしてもどうしても日本と密接な関係にある国・地域に絞った記載となります。自国優先志向で頭がいっぱい、手がいっぱいになる政治家には十分かもしれません。②は外交や国際社会のあり方について俯瞰したい方にはいいかと思います。特に日本からすると、EC諸国それぞれの志向するところについて疎いので、便利かと思います。それで結局のところ③が世界の歴史も振り返りながら、地理と人口統計学の知見データも豊富で、かなり説得力のある世界の未来像を示してくれるので、現代の巷間の議論を目利きする上で役に立つと思いました。著者のピーター・ゼイハンは、読者向けに本書内に掲載された図表のカラー化データや無料の週刊ニュースレターも提供していますので、それも利用すれば、知識のアップデートも図れます。
https://zeihan.com/end-of-the-world-maps/
④は、2023年開講の放送大学テキストです(2024年施行法の補足資料が別冊子で付いています)。購入するきっかけは、たまたま同講座の第1回放送を視聴しておもしろかったからという単純な理由です。民法の家族法分野に留まらず家事事件の手続法や社会福祉制度についても解説されています。一口に相続と言っても家族法だけ理解していれば済む話ではなく、保険や年金、税制の知識も必要となります。婚姻・離婚についても国内外・ジェンダーにおいて多様化したカップルが現実にはあるので、それに伴う講義が盛り込まれている点でも新鮮でした。「人生100年時代」という言い回しはあまり好きではありませんが、コンパクトで分かりやすいテキストだと思いました。