鹿児島雑感

昨年の鹿児島特別国体以来、1年ぶりに鹿児島県を訪ねる機会がありました。初めて行ったところでは、「沈壽官窯」や「奄美の里」がありましたが、2度目(17、18年ぶり?)となるところでは「維新ふるさと館」があります。
今月は、有田焼の産地・佐賀県有田町を訪ねたばかりなので、同じ朝鮮陶工由来の薩摩焼とそれぞれの技法の発展を比べて鑑賞する楽しみがありました。作品収蔵庫やギャラリー売店だけでなく、窯の近くにある陶片だけを見ても味わい深いものがあります。門には日韓の国旗が掲げられ、建物入口には韓国名誉総領事館の看板があるのも見ました。現当主は2021年1月15日より大韓民国名誉総領事に就任して、日韓の親善交流に貢献されているとのことです。
またこれも佐賀(肥前)と同じ印象を感じるのですが、鹿児島(薩摩)における明治初期前後の郷土の偉人愛の強さには圧倒されます。「維新ふるさと館」ではこれでもかこれどもかと、近代日本の礎を築いた人物を顕彰しています。熊本への帰路に立ち寄った桜島SA上り線でもそうですが、郷土の偉人をあしらった土産物が断然多いと感じます。熊本では、今年新1000円紙幣の肖像に採用された北里柴三郎が注目されましたが、全県的な盛り上がりがそこまであるとは思えません。生地の小国や医療業界などに限られているのではないかと思います。なんといっても、歴史上の評価に左右されない「くまモン」という万人受けする当たり障りのないキャラクターがいますから、今さら歴史上のスターをもてはやす必要もないのかもしれないですし、あまり群れることを嫌う熊本人の心性には神輿担ぎは響かないのかもしれません。
ちょうど鹿児島滞在中の10月17日の南日本新聞「かお」欄には、ノーベル賞の登竜門とされるクラリベイト引用栄誉賞を受賞した堂免一成氏(鹿児島県南さつま市出身)が載っていました。同記事の結びに「いずれは故郷に戻るつもりだ」とあって、世界的に活躍している現代の方であっても、どんだけ薩摩人なんだと思いました。