宅地建物取引士証の交付を受けている場合、その有効期間は5年となっていて、その更新を希望する際には、5年毎に法定講習を受講しなければなりません。以前は特定の日に会場で開催される座学講義方式のみでしたが、一昨年末頃よりWeb配信方式による受講も可能となり、今回私も初めてWeb法定講習を受講してみることにしました。その利点は、なんといっても一定期間中(4週間)であれば日時を問わず受講できることです。会場へ赴く必要がありませんから、交通費も往復時間も節約できます。座学だと1日間で6時間の内容を詰め込む形ですが、Webだと土日祝日・夜間でも受講可能ですし、集中力が切れたときは自由に休憩できます。
それで、講義の内容ですが、さまざまな法令改正のポイントや紛争事例の解説が中心となります。行政書士へ持ち込まれる相談案件として相続や土地活用の分野は多いので、どうしても不動産コンサルティング的な知識を要求されますから、この講習は非常に役に立ちます。それで、以前の講習内容と比較すると、コンプライアンスや人権にかかわる啓発的な説明が充実してきた印象を受けました。それだけ宅建取引上のトラブルだけでなく、対人接客上のトラブルの撲滅が業界にとって大きな課題になってきている表れだと思いました。
例を挙げると、取引相手から同和地区の存在について質問を受けた場合、回答しなくても宅建業法第47条には抵触しません。というより、宅建業者は取引の対象となる物件が同和地区に所在するか否かについて調査することまたは取引関係者に教示することを絶対に行ってはならないのです。これに限らず、宅建業者の従業員が賃貸住宅を求めて電話してきた外国人に肌の色を尋ねて、後に損賠賠償請求が認められた事件もあったといいます。
加えて気をつけなければならないのは、反社会的勢力の排除に向けた取り組みです。マネー・ロンダリング対策として業者には、確認記録や取引記録等の作成義務があり、それを7年間保存しなければなりませんし、疑わしい取引については行政庁へ届出義務があります。
このような話を聴くと、高額な献金を集めて海外へ送金しているようなマネロンまがいの教団と票集めの取引を行ったとされる政党の関係者なんかは、まったく民間の事業者では考えられないようなコンプライアンス意識の低さだなと感じます。