熊本日日新聞の「わたしを語る」欄に連載された高谷和生さんの聞き書き記事も第51回を数えた9月3日で終了し、ひとつ紙面を読む楽しみが減りました。そんなところに、翌日の同紙2面「射程」欄の「Jリーグへの外資参入」と題する記事が目に留まりました。同記事では、J3大宮の運営会社を今度オーストラリアの大手飲料メーカー・レッドブルが買収することに触れ、J2熊本への投資呼び込みに期待を寄せていました。
この記事では触れてありませんが、ある経済メディアの関係者が、買収額は3億円程度と伝えています。これは大宮の株主NTT東が保有する株式の額面額100%から算出したもののようで、私のような投資の素人から見ても破格に安い取得額だと思います。
しかし、驚いたことに、過去の買収例の取得株式と金額は、以下の通りバカみたいに安いのです。
J1 鹿島…メルカリ 61.6% 16億円
J1 FC東京…ミクシィ 51.3% 10.5億円
J2(現J1) 町田…サイバーエージェント 80% 11.48億円
ありていに言えば、それぞれのクラブ関係者に企業価値を算出できるだけの経営のプロがいなかったからだと思います。前述の「射程」記事の視線の先にはおそらく熊本における外資の最大手TSMCへの期待感があるのだと思いますが、ここはまずJ2熊本の企業価値を知ることが必要だと思います。
世の中には、Jリーグクラブの企業価値を試算している専門家がちゃんといます。たとえば、J2岡山の筆頭株主(オーナー)の木村正明東京大学先端研特任教授の研究がそうです。この方は、岡山県出身で東京大学卒業後、ゴールドマンサックスに入社し、30代で執行役員に上り詰めた人物ですが、Jリーグ入りを目指す岡山を株式会社化し、自ら社長として経営的基盤を築きました。現在は2万5000人入る専用スタジアム建設へ向け尽力されているようです。
後掲の動画(17分過ぎ)を視聴すると、木村特任教授によるJ1クラブの価値推定を知ることができます。2つのモデル値が示されていますが、以下の3クラブの高い方の額は次の通りです。
鹿島 183億円
FC東京 158億円
町田 57億円
外資を呼び込むのもいいですが、安売りすることはないよと言いたいだけです。
https://www.youtube.com/watch?v=YwmHpdvlv5o
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rsk/470141?display=1