淑徳大学総合福祉学部教授・結城康博著『介護格差』(岩波新書、1000円+税、2024年)より印象に残った点をメモしてみました。知っているのか否かで介護生活の差があるので、元気なうちからの「介活」を勧めています。
●介護と経済的側面からの格差問題→金銭的余裕の有無で状況が変わる
・裕福な高齢者ほどケチ。1円単位で請求書・明細書の問合せが多い。
・夫も妻も国民年金受給者(月10万円層)だと生活が厳しい。
・医療や介護の負担がゼロの生活保護受給者は「最下位層」ではない。
●頼れる人がいるか否かで明暗が分かれる
・家族等が面会に来る高齢者は介護生活も充実。若いときから「人付き合い」を心がける。
・身元保証人がいないことを理由に入居を法令上断れないが、空きがないと別の理由で断られる。
・成年後見人制度は限界がある。医療行為への同意に応じる権限までは法律的に付与されていない。
●医療と健康格差
・人はなかなか死なず、認知症や介護状態となって晩年を生きてから最期を迎えるのが現実。
・将来の「介護生活」を見込んでコミュニティの輪の中でうまくやっていくには現役時代の話を出さない。
(男性は職歴や学歴の話を出しがちだが、女性から煙たがられる)
・統計学的には、年齢を重るにつれ、認知症となる確率が高くなる。
(75-79歳:10.4%、80-84歳:22.4%、85-89歳:44.3%、90+歳:64.2%)
・要介護認定申請と主治医 普段から関係が深いかかりつけ医の意見書>受診歴が少ない総合病院の意見書
●介護人材不足と地域間格差 2024年改正介護保険制度の問題点と格差是正のための処方箋は?
・介護人材不足による深刻さ 介護事業所閉鎖(2023年510件が倒産・休廃業・解散と過去最多)
・訪問介護サービスの基本報酬引き下げにより在宅介護は幻想化する。
・中山間地域といった過疎地域での在宅介護はサービス供給面から困難になっている。
・離島では介護サービスが存在せず介護保険料だけが徴収されている事象も発生している。
・住む市町村による法令解釈の違いで制度も異なる。介護保険料の地域差(小笠原村3374円~大阪市8749円)
・住む市町村により要介護認定率・介護度判定に差がある。
・男性は口数が少ないため調査員が書く調査票特記事項に問題点が拾い上げられにくい。家族同席したがいい。
・介護保険以外のサービス格差が自治体でも民間市場でもある。
・尋常ではない訪問介護の人材不足の要因は給与や職場環境の格差がある。
・ケアマネジャーも不足。5年ごとの更新研修の負担や受験資格の厳格化も要因。
・市町村の財政力と首長次第という地方政治の差もある。千葉県長柄町ではヘルパー資格を無料で取得できる。
・元気高齢者の就業率上昇がボランティアや民生委員の人材不足深刻化を招いている。
・団塊ジュニア世代の介護危機
・地域包括支援センターは介護予防プランに追われ総合相談や地域ネットワーク作り、医療介護連携が疎かに。
・旧「措置制度」の評価を見直すべき! 自治体責任を低下させない。
・介護は「雇用の創出」 ヘルパーの公務員化を進めるべき 10%程度の介護報酬引き上げを!
・財源としては法人税引き上げと資産に基づく負担増を 介護は経済政策(「負担」ではなく「投資」)
●介護は情報戦→知っているか否かで違う→「介活」で格差を乗り切る
・「介活」をやってみよう!
①支えられ上手に ②ハラスメントの加害者にならない ③良し悪しは「口コミ」から
④元気なうちから親子で考えよう ⑤介護相談機関などを調べておこう ⑥「かかりつけ医」を持とう!
⑦元気なうちは働こう! ⑧避難行動要支援者名簿への登録に同意する(同意しないと要支援の対象外)