ちょうど1年前に読んだ、民事の元裁判官・瀬木比呂志氏の『我が身を守る法律知識』(講談社現代新書)の中で、過労死・過労自殺をめぐり以下のような記述がありました。年度が替わり新しい仕事環境で心身に変調をきたしている人も多いと思います。p.200-201より長い引用ですが、一助となればと示してみます。
【過労死や過労精神障害・自殺による請求がなされるような例では、被用者は、まじめで責任感の強いタイプが多いのです。そういう人は、長時間労働でも途中で適当に気を抜くことができず、自分だけで苦労を抱え込み、自分がやるしかないと悲壮な覚悟をし、さらに、「ここで倒れたら自分はおしまいだ」とみずからを追い詰めてゆくことになりやすい。そうならないためには、「そうした自分から距離を取ってクールに状況を見詰めること」と「倒れる前に手を挙げる心構え」が必要だと思います。 若いころ、ある先輩が、「裁判官なんて、代わりはいくらでもいるんだよ。最高裁判事だろうと、難件を抱えた裁判長だろうと、死んだらすぐ代わりが来るのさ。ただ、ほんのちょっとの間波が立つだけのことなんだよ」と言うのを聞いたことがあります。そして、今になってみると、あれは真理だったと思います。 代替性のない仕事などほとんどありませんが、あなたという人間については代替性はありません。動物の一種として人間も「サバイバル」あってこそですから、「もうだめだ」と感じたらすみやかに医師にかかり、診断書を書いてもらって見切りをつけましょう。まずは、その時点で、肉体か精神に異変が出始めています。 私自身もそうした経験があるからいうことですが、実際には、そこで見切りをつけさえすれば、回復と再挑戦は難しくないのです。まずは、自分と家族を大切にしてください。なお、自分の職場の休職制度についても、あらかじめ調べておくとよいと思います。】