エセものではない科学と歴史を学べ

水谷千秋『教養の人類史』(第七章 現代史との対話――明治維新と戦後日本)読書メモより。
・p.239-240見田宗介(読売新聞2018.1.25)…「僕の考えでは、平成の始まりは明治維新と並ぶ、大きな歴史の曲がり角です」「二つは対照的です。明治は坂を上り始めた時代、平成は坂を上り終えた時代」「消極的にとらえる必要はありません。日本は富国を成し遂げたと考えるべきです。この先、谷底に下りるのではなく、高原を歩き続けられるようにすることが大切です。地球環境・資源に限りはありますが、無理をしなければ、今の相当豊かな生活をほぼ保つことができるはずです。どうやって高原の明るい見晴らしを切り開くのか、それが日本の課題です」。
・p.241吉見俊哉(『平成時代』2019.5)…「(平成とは)グローバル化とネット社会化、少子高齢化の中で戦後日本社会が作り上げてきたものが挫折していく時代であり、それを打開しようとする多くの試みが失敗に終わった時代であった」。
・p.243福沢諭吉(『学問のすすめ』)…「学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となるなり」。
・p.254半藤一利(『昭和史1926-1945』)…「(日露戦争勝利で)日本人はたいへんいい気になり、自惚れ、のぼせ、世界中を相手にするような戦争をはじめ、明治の父祖が一所懸命つくった国を滅ぼしてしまう結果(になった)」。
・p.259司馬遼太郎(『「昭和」という国家』)…「(昭和の初年からの20年、この国は)日本の軍部に支配される、というより占領されていたのだろう」。
・p.265水谷千秋(堺女子短期大学「短大通信」2020.8)…「ポストコロナ世界はモラルなき乱世の時代、と見る識者も多い。しかしこれからの時代(それは気候危機の時代でもあろう)を、ただ世間の動きに順応し生き延びていくのではなく、どういう世界を創っていくべきかを考え、主体的・自覚的に生きていくには、やっぱり私たちは科学や歴史を学ばなければならない。大学は何よりもそのための場である。」。
水谷千秋『教養の人類史』(第八章 人類史と二十一世紀の危機)読書メモより。
・p.270-271長谷川眞理子(『進化的人間考』)…「(ヒトは生後9か月を過ぎると)自分が興味を持ったものをさしたり、母親の前に差し出したり、さらに手渡したりするようになる」。「三項表象」の理解=「共同注意」の発生。人間だけが三項表象を理解し、美の観念を持ち、言語を持つ。
・p.275水谷千秋…「現代に起きていている問題はすべて過去の歴史にその源があるのであり、その解決への道も歴史が教えてくれるはずであることが垣間見えてきます。枢軸時代(カール・ヤスパースが名付けた、今から2500年くらい前のヘレニズム文化、ヘブライズム、仏教、儒教といった思想が生まれた時代)の先人たちの教える人間愛と人生への態度、そして近代科学の教える合理主義と科学精神のもたらす成果が、私たちに未来を指し示してくれるはずなのです。これから待ち受ける不安な未来に対し二十一世紀の人類が駆使できる叡智は、この二つ以外には存在しません。決して偏見や憎しみ、科学に基づかない思い込み、呪術、差別、偏狭な愛国心、また富への執着といったものに頼って判断してはならないのです。今世紀から来世紀に向けて人類の生存はそこに懸かっているのではないか、と私は思います。」。→p.287人間の尊厳というものへの理解がまだ日本では不足している。
・p.277-278斎藤幸平(『人新世の「資本論」』)…「資本主義こそが、気候変動をはじめとする環境危機の原因にほかならない」「資本は無限の価値増殖を目指すが、地球は有限である」。→p.283「コモンズ」=p.282宇沢弘文「社会的共通資本」
・p.278水野和夫(『資本主義の終焉と歴史の危機』)…「資本主義は『中心』と『周辺』から構成され、『周辺』つまりフロンティアを広げることによって、『中心』が利潤率を高め、資本の自己増殖を推進していくシステム」「地理的な市場拡大は最終局面に入っている」「地理的なフロンティアは残っていません」。→p.281新自由主義の失敗、一部の特権階級だけが富を独占、格差の拡大。