本日(2月25日)の朝日新聞1面トップ記事は、宮沢喜一元首相の40年間に及ぶ大学ノート185冊の日録発見のニュースでした。1966年から2006年が記録されたそのノートは、戦後政治を検証する第一級の資料であると思います。元首相の選挙区だった広島県福山市には、今年5月25日に「宮沢喜一記念館」がオープンしますが、存命中、岸信介が「人の世話をしないから子分がいない。頭がいいものだから、人がみんな馬鹿にみえるんだよ」と評したように、けっして人気がある人物ではありませんでした。東大出でも法学部卒の人しか相手にしない性分もあって、エリート意識が強かったエピソードが豊富です。英語力も抜群で、日頃から人前でも英字新聞を読んでいて、英語がまるでダメな「ハマコー」からいちゃもんを付けられた際には、「国会議員なんだから、浜田さんも英字新聞ぐらいはお読みなさい」とやり返しています。「ハマコー」もこれには感化されて、息子の浜田靖一(現自民党国対委員長)をアメリカのカレッジに留学させたといわれています。嫌味がある人物のイメージが付いて回りましたが、教養や知性にあふれた人物であったことは間違いなく、ハーバード大学教授から外交官へ転身したキッシンジャーが最も対話してきた日本の政治家だったこともその証しです。
この宮沢元首相が武蔵高-東大法の学歴ですが、県副知事を今年辞めたばかりの人も同じです。ただし、後者の読書遍歴はビジネス書のたぐいがほとんどで教養やら知性はうかがえませんでした。
そういう意味では、学歴だけでは、教養やら知性が備わっているかは、判断できません。判断する側にもそれらが備わっていなければ、単なる人気度の評価しかできないと思います。手始めに、水谷千秋著の『教養の人類史』(文春新書、1200円+税、2023年)に記されている程度の知識は、理解しておきたいものです。