木漏れ日のような穏やかな幸せ

12月23日は熊本市圏のバス・電車の運賃が無料ということもあって、公開されたばかりのヴィム・ヴェンダース監督の映画『PERFECT DAYS』を、桜町で観てきました。ふだん映画館で映画を鑑賞することはなく、ずいぶんと久しぶりでしたが、心穏やかになれる味わい深い作品でした。ヴェンダース監督の作品では過去に『パリ、テキサス』(1984年)と『ベルリン・天使の詩』(1987年)しか観たことがなくて、どちらかというと難解な作風の印象がありました。今回作の舞台は現在の東京であり、出演者も日本の役者だけなのですが、都内に住んで働く生活者の日常を捉えていて、いかにもクールジャパン的な違和感はありませんでした。
作品の良し悪しということではなく、気になった点をいくつか挙げてみます。1.主人公・平山が仕事に使っている車はダイハツの軽ワゴンだった。2.平山のルーティンの一つに酒場で酎ハイをひっかけるが、飲んだ後も自転車に乗っている。3.平山が通う小料理屋のママ(石川さゆり)が「朝日楼」をさらりと歌うのだが、当然のことながら反則的に上手過ぎる。ここは日本と海外では受け止めが異なるかもしれない。(ちなみに筆者は浅川マキが歌う「朝日楼」を1980年代にナマで聴いたことがある。)4.トイレ清掃のロボット化は難しいと思った。清掃する対象物の形状が複雑であり、清掃中に出くわす利用者への対応が無理。作中で平山が独自に清掃用具を作っていることも明らかにされた。5.ママの元夫役(がんで死期が迫っている設定)の三浦友和のくたびれ感がじーんと来た。上下スーツだがスニーカー履きで登場。元妻に「謝りたい」「ありがとうと言いたい」「いやただ会いたかった」というのが切ない。
来館者の年齢層は圧倒的に若くても50代以上の印象を受けました。作中に流れる音楽(※)を年代的に懐かしく思えてその点でも見入ってしまうのではないかと思います。その一方、そうしたミドル層の子世代の若者たちにも親世代の日常を通じて「暮らしとは?」「労働とは?」「幸せとは?」「喜びとは?」を感じてほしい気にもなりました。
(※) https://www.perfectdays-movie.jp/collection/
写真は記事と関係ありません。正月用に買ってきました。