自分の業務分野では馴染みがない世界ですが、興味があって秋川卓也・木下剛著『はじめて学ぶ物流』(有斐閣ブックス、2900円+税、2023年)を読んでみました。普段の生活の中で目にする物流と言えば、道路を行き来する貨物輸送のトラックのイメージが強いと思います。ですが、それはほんの一部の姿でしかなく、物流センター内の保管や荷役、それを機能させる情報システムなど、規模は大きくてとてもじゃないですがKKD(経験・勘・度胸)では済まない分野であることを知りました。KKDはまさに属人化の極みですから、それでは物は流通できません。物流を可能にする理論がしっかりないことにはシステムは組めませんし、ここに学問として成り立つ理由があるのだと感じます。
本書は、さまざまな用語の定義が親切に解説されています。それらの用語の定義にはJISがかかわっていて、その重要性を改めて認識しました。それでいて語り口は平易であり、紹介されているエピソードにはいくつもの興味深いものがありました。たとえばコンビニ1号店オープン当初は1店舗へ1日70台のトラック配送があっていたのが、現在は管理温度帯別の商品配送でせいぜい1日10台に効率化されているそうです。FedEx創業のきっかけは、教授から自己の理論を低評価された学生(創業者)の反発によるものだったということです。ちなみに本書では触れられていませんが、低評価を受けたレポートは同社本社に今も飾られているそうです。