アダム・プシェヴォスキ著『民主主義の危機 比較分析が示す変容』(白水社、2400円+税、2023年)の第一章イントロダクションションのp.14において以下の記載があります。「ギンズバーグとヒュクのいう三つの「民主主義の基本的な述語」なるものは、競争的選挙、表現や結社の自由の権利、法の支配から成り立っている。この三位一体を民主主義の定義とすれば、民主主義が危機にあるかを見極めるための便利なチェックリストを入手できる。すなわち、選挙が非競争的か、権利が侵害されているか、法の支配が崩壊しているか、というものだ」。つまり、競争的選挙は民主主義の定義の筆頭に挙げられる基本ということになります。現代においてロシアや中国では選挙による権力交代はありませんので、民主主義が機能していないと言えます。しかし、完全な比例代表選挙が行われていても、ナチスに政権を与えるまでに至った歴史もあります。どういう道をたどってそれに至ったかは、同書を手に取ってみると理解できると思います。
さて、9月26日に任期満了を迎える市選挙管理委員としての実質的に最後の職務となる主権者教育に本日は立ち会いました。小学6年生を対象にした模擬選挙の出前授業において投票所の受付・選挙人名簿対照係を務めました。模擬選挙とはいってもかなり本格的で、候補者の選挙演説動画や選挙公報を児童に見てもらって自身の投票行動を決定してもらいます。実際の選挙で使われている記入台や投票箱を用いて投票を行ってもらい、開票結果の発表まであります。真剣にワークシートに取り組んでいるのがたいへん頼もしく感じました。
架空の十八ヶ丘市の市長選挙では、人口減少対策が争点となり、3人の候補が政策を訴えました。私は起業・雇用・進学支援を訴えた候補が課題解決に効果的に思えて当選を期待したのですが、児童たちの支持を集めたのは子育て支援を訴えた候補でした。給食無償化など児童虐待の中でも経済的ネグレクトの解消に期待する声が多く聞かれました。世代的には少数ですが、模擬投票では94.53%と極めて高い投票率でしたので、選挙権が得られる年齢になって実際に投票を行えば、選挙結果を大きく変えることになります。その力を感じ取ってもらえたのなら嬉しい限りの経験でした。