東京電力福島第一原子力発電所から出る汚染水を大量希釈したALPS処理水を海へ排水することが問題になっています。これによって水産業界において対中輸出ができなくなる影響が出ています。
この一連の流れの損得勘定はどうなっているのか気になりましたので、いろいろデータを見てみました。
まず、日本から中国への2022年のJETRO発表の輸出額ですが、1848億3070万ドル(為替レート131.46円/ドル)となっています。品目別内訳では、ほとんどが工業製品(電気機器:構成比27.2%、製造用機器・機械類:同20.0%、自動車・部品:8.4%、光学機器等:7.5%)となっており、水産物を含む食品は1%にも達していません。中国からの日本への同年の輸入額は1,887億673万ドルで、そこでは水産物を含む加工食品が構成比1.3%となっています。エネルギーや貿易全体の政策を所管する経済産業省にとっては、水産物の輸出の重みは小さいことがうかがえます。
農水省の統計では、2022年の中国向け水産物の輸出額は871億円、香港向けが同755億円となっています。
ところが、中国へ輸出する水産食品関連企業727社の売上高に占める中国向け輸出の割合は平均で55.9%ということでかなり中国依存度が高い傾向があります。水産食品関連業界に限って言えば、かなり影響が大きいことが分かります。
一応政府も漁業者らの風評被害に対処するため800億円からなる基金を設置し、損害が出れば東電が賠償するとなっていますが、基金総額の規模は上記の農水省統計にある1年間の輸出額におよびません。
そこで、原子力市民委員会が出している陸上保管費用と汚染水処理対策委員会のもとに設置されたトリチウム水タスクフォースの報告書で示された海洋排出費用を示してみます。2022年夏から廃炉予定である2051年までに発生する汚染水の長期保管用タンクの建設費用は374.2億円となっているのに対して、海洋放出(希釈あり)費用は18.1億円となっています。
損得勘定だけからいえば、一見して海洋放出よりも費用が高い陸上保管を続けた方が、新たに発生する貿易損失や風評被害賠償の見込み額よりも安上がりのように思えます。
写真は、ウィーンの氷結したドナウ川(1993年1月撮影)。スケートを楽しんでいる市民の姿が写っています。この近くにIAEA本部があり、建物の前まで行ったことがあります。