対話は一人でもできる

劇作家の鴻上尚史氏が通信社からの依頼で成人の日に寄せて書かれたボツ原稿をSNS上で公開されています。成人を迎えてからかなり期間が経った大人にも読む価値のある文章だと思います。ここでは読書を通じた対話を勧めています。いわゆる宗教2世を思い浮かべるとわかりやすいと思いますが、特に同質性の高い環境に置かれた立場の人からすると、周囲に救いの手を差し伸べてくれる存在の人が見当たらないことが多いと思います。学校にしても、職場にしても、ともすれば同質性を高めるために熱心な人が、救世主の顔をして近づいてくることがあるかもしれませんが、それではますます逃げ場がなくなるだけで、自分を騙しながら問題を先送りあるいは圧殺してしまうことになりかねません。もちろん、本当に助けてくれる人が身近にいるかもしれませんが、出会えるかどうかは偶然に近いと思います。
鴻上尚史氏の著書では、『 「空気」を読んでも従わない』(岩波ジュニア新書、820円+税、2019年)もお勧めです。とりあえず、どんな本を読んだらいいか手がかりがなければ、これを読むと、楽に生活できると思います。私事ですが、4年前に大学進学した子どもにも贈った本です。
子どもへ贈った本は多数ありますが、7年前に理系の大学へ進学した子どもには、望月衣塑子著『武器輸出と日本企業』(角川新書、800円+税、2016年)を贈ったことがあります。それは、同書のあとがきで南原繁の言葉が紹介されているのを読んでほしかったからなのですが、この7年間の動きを見てもそれは良かったと思います。せっかくなので、以下に示します。
「大学は国家の名において学問研究の自由の範囲が著しく狭められ、時の権力者によって都合よき思想と学説が保護せられ、これに反対するものはしばし迫害せられ、弾圧せられ来った…われわれは、わが国の教育をかような官僚主義と中央集権制度から解放し、これを民主的また地方分権的制度に改編しなければならぬ」
「国の政治に何か重大な変化や転換が起きるときは、その前兆として現れるのが、まず教育と学問への干渉と圧迫である。われわれは、満州事変以来の苦い経験によって、それを言うのである」
「大切なことは政治が教育を支配し、変更するのではなく、教育こそいずれの政党の政治からも中立し、むしろ政治の変わらざる指針となるべきものと考える。…いまの時代に必要なものは、実に真理と正義を愛する真に自由の人間の育成であり、そういう人間が我が国家社会を支え、その担い手になってこそ、祖国をしてふたたびゆるぎない民主主義と文化的平和国家たらしめることができる」