ブルーカーボンに目を向けてみよう

わが宇土市の市街地は海抜標高が低く、近世の城下町では舟による水上交通が盛んでした。今も大雨になると、水路の水面から路上まで1mに満たない始末です。市の西部には日本の「渚百選」「日本の夕陽百選」に選定された景勝地「御輿来海岸(おこしきかいがん)」があり、干潮時の砂紋が観光の目玉となっています。ただ、これらの市街地や景勝地も気候変動による海面上昇の影響で、おそらく200年後には海没の可能性があります。しかし、あまり市政課題の俎上に載るまでには至っていないようです。
最近、枝廣淳子著の『ブルーカーボンとは何か 温暖化を防ぐ「海の森」』(岩波ブックレット、580円+税、2022年)を読んでみました。海洋には、マングローブ林、塩性湿地、海草藻場、海藻藻場などのブルーカーボン生態系があり、地球上で最も効果的な炭素吸収源として注目されているそうです。その炭素貯留量は非常に大きく、その貯留の持続性が樹木なのどの数十年尺度のグリーンカーボンに比べて数百~数千年と長期であり、二酸化炭素回帰リスクが低い特長があります。それだけ二酸化炭素排出量の削減に寄与する存在なのですが、このブルーカーボン生態系の破壊が続けば、逆に大きな排出源になる危険を秘めています。
そこで、いかにブルーカーボン生態系の回復を図るかが重要課題になっていますし、そのプロジェクトを進める中で排出権取引となるブルーカーボン・クレジットの販売へつなげていく展望も見えてきます。熊本県水産研究センターでは『熊本県アマモ造成マニュアル』を作成しているそうですが、アマモ場の再生は磯焼け防止や漁獲量回復になるため、取り組む必要があるようです。