今月前半の読書は『ヨーロッパ覇権以前』で楽しみました。栄代から元代をはさみ明代初期まで遠くは東アフリカまで大きな海軍力を伴って交易の海洋進出を果たした中国の盛衰について考察した部分は、現在に通じるものがあって面白かったです。原書が出版されたのは1989年ですから、現在の世界に占める中国の影響の大きさとは異なる頃に書かれた点でも、興味深く思いました。ただ、著者の中国に関する記述は言語の違いもあるのか、間違いも多く訳注によってかなり補正しています。交易のグローバル化による感染症の流入により、ひどいときは中国河南地域の人口の9割近くを失う危機もあったとみられています。国内の経済危機が海洋進出どころではない事態を招き、その後、力の空白にヨーロッパのポルトガル、次いでオランダ、イギリスという具合に海洋進出があり、近代世界システムが形成されていったというのが、著者の見立てとなります。歴史上、覇権の基礎要素として海洋交易と感染症対策があったということを強く印象付けられました。
あと、昨日気になったニュースとしては、山口県においての多額の給付金誤入金事件で返金を求められた若者の所在が不明になって、町が民事訴訟に出て相手方の氏名を公表する事態となった問題です。訴えの中でこれまた多額の弁護士費用も上乗せされていましたので、行方をくらましている誤送金されたばかりか借金を無理やり追わされたようなものです。しかし、この若者のように普段手にしたことのない多額の現金を手にすると、ここまで後先の損得勘定がわからなくなるものなのでしょうか。逃げ回るというストレスを抱えているでしょうから、どんな心理状態なのか、心配です。もっとも、多額の現金を預かっているとおかしくなる例は山口の若者に限りません。たとえば、成年後見人を務める弁護士が今回の倍以上の預かり金を競馬につぎ込んでいたという事件が本県でもありました。法律の専門家でもこうした常識外れの行動をとる人は珍しくありません。いわゆる士業専門家の中には若い頃に資格取得に専念するあまり会社勤めなどの社会人経験がなく、身だしなみが疎かなことはもちろんのこと、人付き合いでも独善的な人が結構います。こういう輩は人から忠告されるとコドモのように憤慨して反論するので要注意です。たいていの大人は、こんな場合、当の本人を刺激しないように口をつぐんでいるだけですから、当の本人側は自分が周囲からどう見られているか普段気づいていないのが実態なのです。いつの世もそのように動いているものです。ともかく成年後見人も家庭裁判所からハズレの専門家をあてがわれることがあるので、それを利用しないで済む対策を講じることが重要かもしれません。
写真は、ファンダメンタルな話の投稿をしていたら、パンダメンタルな気分になったのでロンドン動物園で見たパンダです(1994年1月撮影)。海外では、このロンドンと天津で見たことがあります。