ヨーロッパ覇権以前

昨夜からジャネット・アブー=ルゴド著の『ヨーロッパ覇権以前』(岩波現代文庫、上・下各1400円+税、2022年)を読み始めています。原書は1989年に出版されていて、著者も2013年になくなっています。本書は13世紀のユーラシア大陸における世界システムについて書かれているので、海洋国家として覇権をなした英国はもちろん日本については登場しません。序文の記述の中で歴史専門家の役割の大きさというかその仕事の厳しさについて触れた点が印象に残りました。たとえば、「彼らが研究のために必要とする言語を修得し、重視する文脈理解のための技術を磨くのには一生を要するであろう。」「必要な言語にもっと精通し、歴史のよりよい訓練を受け、そして私が描こうとした絵画を改善するために所与の諸地域についてより深い理解をもつ人びとを刺激してほしいものである。」などがそうです。歴史を学ぶ際には、その誘い手の資質が重要で、訓練を受けていない著述家の話は聞くに値しないどころか有害ということが分かります。海外のことはその地域の過去の言語についても知らなければ理解につながらないとも言えます。
写真は1993年に行ったロンドンの蠟人形の館にあったゴルバチョフとエリツィン。今、かの国の大統領の像があったら無事ではない気がします。