浅はかなデジタル万能論はご免だ

ヴァージニア・ユーバンクス著の『格差の自動化』(人文書院、2800円+税、2021年)を読むと、それは米国におけるデジタル監視社会のありようを考察したものですが、米国と政治的に対立している中国でも同じような姿があるかもしれないし、なんとなくデジタル化を進めている日本でも警戒しなければいけない動きだと思いました。解説を寄せている堤未果氏の言葉を借りれば「浅はかなデジタル万能論と現実との乖離がもたらす危機への警鐘」の書ということになるかと思います。ハイテクツールを使って貧困者のデータベースを作り特定し処罰することにしかならないのであれば、塀が見えない監護施設に閉じ込めて捨て置くのと同じというわけです。日本国内でもコロナ禍でのさまざまな給付金のオンライン申請において理由が不明なまま支給が行われなかったり、電話がつながっても担当者が申請書類の中身に全然通じていなかったりしたという例をずいぶん見聞しましたが、おそらくそれに似たデジタルシステムが米国でも流通しているように感じました。今度のデジタル庁の面々も本当に国民のためになるツールとは何なのかを考えられる能力をもった人材で構成されているのか、見極めないとやってる感だけの浪費官庁に成り下がる可能性があります。