本号掲載記事から気になる情報をメモしました。
○松野誠也「日本軍毒ガス弾製造工場で何が起きていたか――新資料が示す実態」
・東京第二陸軍造兵廠曽根製造所(現在の北九州市小倉南区下吉田)では、毒ガス(広島の大久野島で製造)を充填して毒ガス弾を製造する作業(填実という)や発煙弾・焼夷弾の製造を行っていた。同製造所では計148万発の毒ガス弾を製造した。
・国立公文書館が所管する曽根製造所調製「軍需動員実施ノ概況及意見」は、1941年度の要員増強と毒ガス弾製造量の増大が確認できる唯一の資料である。
要員人数:1941年6月373名→同年9月590名→同年12月628名→1942年3月945名
毒ガス弾検査合格数:1941年4-6月103,112発→同年7-9月109,087発→同年10-12月153,517発→1942年1-3月148,447発
・曽根製造所では原始的な方法で毒ガス充填作業が行われていた。工室内の空気は蒸発したびらん剤によって汚染されていることから、排風機が設置され、風道から排風塔(陸自小倉駐屯地曽根訓練場に4本現存)から排出していた。だが、通気不完全な劣悪な労働環境であり、工員が中毒被災した事故発生の記載も上記資料にはある。さらには製造した毒ガス弾からの漏洩や噴出事故が発生していた事実も記載されている。
・慢性気管支災や肺がんなどに苦しむ元曽根製造所関係者に対する「毒ガス障害者対策」(健康診断、健康相談、医療費や各種手当の支給など)が始まったのは1993年からだった。実態把握は関係者の証言によるしかなかった。上記資料が国立公文書館へ移管されたのは2017年度であり、それまでは陸軍省・第一復員省の流れをくむ厚生労働省内で死蔵されていた。もっと早くに公開されていれば対策の実現も早まった可能性がある。
※旧軍の毒ガス弾は製造当時の国際法においても使用が禁止されていましたたが、実戦使用したことが分かっています。敗戦前後にこの国際法違反を隠ぺいするために国内外で廃棄・遺棄しました。そのため、戦後も国内外で有毒成分に暴露したことによる被災事件が発生しています。莫大な日本の税金を投じて中国国内での処理事業が続けられてきましたが、被害を受けた中国の国民へ日本政府が補償を行うことはありませんでした。曽根製造所における毒ガス弾製造については、北九州市平和のまちミュージアムの展示や江浜明徳著『九州の戦争遺跡』の記述にもなかったので、本記事に触れるまで承知していませんでした。排風塔の存在と合わせてもっと知られるべきだと思います。円筒状の排風塔はグーグルマップの航空写真で確認できます。
○吉田敏浩「ルポ戦争準備国家」
・健軍配備の長射程ミサイル「二五式地対艦誘導弾」(配備完了の3月31日に合わせ「一二式地対艦誘導弾能力向上型」から改称)と静岡県の富士配備の地対地弾道ミサイル「二五式高速滑空弾」はともに三菱重工の開発によるもの。
・戦前・戦中の軍隊直轄の国営軍需工場を工廠と称したが、三菱重工などは現代版工廠としてミサイル特需で潤う。長射程ミサイルの開発・量産などの費用は、今年度予算で約9733億円に達する。
※敵基地攻撃能力を持つことは相手にとっては脅威でしかないので、そうした兵器は保有しないというのがつい3年半前までの政府見解でした。相手にとって保有基地は最前線となるわけで、そのことからも、抑止力になるどころか、大枚をドブに捨ててまで基地周辺住民を危険に晒す愚策でしかありません。
○内田聖子「軍拡はAIからはじまる」
・「QuitGPT」(ChatGPTを解約しよう)という運動が2026年1月から始まっている。トランプ政権下のICE(移民関税執行局)による移民排除や不当逮捕にはOpenAI社が開発したChatGPT利用の監視技術が使われている。同社の社長夫妻は、トランプの支持基盤MAGAInc.へのテック業界最大2500万ドル(約40億円)の寄付者である。市民がChatGPTのサブスクに支払ったお金でOpenAIは莫大な利益を得て、それがトランプへの献金となり、同社の技術は移民の弾圧や排除に使われている。その連鎖を断ち切り、トランプとICEに対抗するために、OpenAI社が開発したChatGPTを解約しようというものだ。
・この運動は米国とイスラエルによるイラン攻撃後さらに広がった。この作戦に米国防総省がアンソロピック社のAIモデル「Claude」を使用していたので、同社が国防総省に対して自社のAIを使用することを禁じた。アンソロピック社が同省のサプライチェーンから排除された代わりに同省との契約にすかさず名乗りを上げたのがOpenAIだった。倫理よりも利益を求めるOpenAIへの批判が一気に高まった。3月初旬時点でQuitGPTに賛同し解約またはボイコットした人は400万人と推計されている。OpenAIでは社員が大量に離職し、契約を破棄する企業・団体も多数現れた。GoogleとOpenAIの従業員1046人が、アンソロピック社への連帯を示す公開書簡に署名した(4月13日現在)。
※ChatGPTに今年の東大の入試問題を解かせたら数学は満点なのに、世界史の正答率は25%と、「(AIの)知識量は豊富だが、論述を適切に構成する力がなかった」(朝日新聞東京本社版5月8日夕刊)ようです。AIには効率一辺倒の正答を求める技術はあっても歴史から何を学ぶかといった、倫理判断の力は弱いので、AIを使う人間の能力が試されると感じます。主権者による権力者に対する監視の力を日頃から養い、不当な権力の行使をさせないよう行動することが重要です。