3月21日の朝日新聞読書面に、ノンフィクションライターの安田浩一氏による、池尾伸一著『仮放免の子どもたち 「日本人ファースト」の標的』(講談社、2000円+税、2026年)の書評が載っています。川口在住のクルド人に対する差別問題を取材されていた安田氏が、その書評の冒頭で「やりきれない。本書を読み終えた直後、憤りが胸の頂を突き上げた。だって、ひどいじゃないか。日本で生きていく「資格」がないと、国から宣告される人たちがいるのだ。一体、何をしたというのか。」とやり場のない怒りをぶちまけています。私も本書を読み終えて同じ感情を抱きました。
本書では、「「母国に帰れ」とヘイトスピーチを浴びせられ、暴力を振るわれた子ども。重病でも病院に行けない子ども。就職が決まったと思ったら取り消された若者。親と無理矢理に分断された子ども。言葉も分からない「母国」に強制送還させられた若者……。」(p.309)が、東京新聞編集委員の著者の読みやすい筆致でルポルタージュされています。それを通じて見えてくるのは、子どもたちが置かれた理不尽な境遇を理解しようともせず、逆に陰湿に貶めて攻撃する腐った日本人の姿であり、そういう醜い日本人の顔色を窺いながら外国人管理を行おうとするこれまただらしのない政権や入管行政の実態です。
本書の優れた点は、現場目線の記述だけでなく、詳細解説された周辺情報です。この部分の拾い読みだけでも価値があります。たとえば、クルド人とはどのような苦難を負った民族なのか、日本の難民認定審査がいかに国際基準から外れているか、教育を受ける権利や家族が一緒に暮らす権利を保障する子どもの権利条約に対する理解がいかに浸透していないか、無国籍者を保護する制度の不備について取り上げられています。さらに、著者は行政の問題だけでなく、裁判官の国際人権条約に対する理解の低さ、国内人権機関の不備といった面にも目を向けています。そのように甚だしく国際的に立ち遅れている人権感覚に警鐘を鳴らしています。
外国人の人権を蔑ろにするようでは自国民の人権もどこか蔑ろにされる社会しか生まれない思いをします。