清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会編『球磨川流域豪雨問題とダム問題』(すいれん舎、2000円+税、2025年)を、編者の会の共同代表の一人である緒方俊一郎氏から頂戴して読んでみました。同会は、発足して30年以上。川辺川ダム建設は、たとえ流水型であっても球磨川流域の豪雨災害を防ぐことはできず、川辺川沿いの脆い地質の山地の岩を崩し、川底に堆積した土石により清流を濁水化させると考え、反対しています。反対するのは流域の地形や地質、人吉市に氾濫を起こした洪水の原因分析など、専門的な検証結果の積み重ねによります。その論拠の強さや確かさは、本書を読むとよく理解できましたし、これまで国交省は説明会でも質問に答えず、時には事実の捏造を繰り返してきた歴史が明らかにされています。
たとえば、2020年7月に発生した豪雨災害後、国交省は「川辺川ダムがあれば浸水は6割防げた」と主張し、当時の熊本県知事に流水型のダム建設へ舵を取らせました。しかし、この豪雨災害時に、川辺川流域に局所集中豪雨が降ったわけではありません。球磨川の中流域の山地へ局所集中豪雨が降り、人吉市街地で球磨川がまだ氾濫しない時刻に支流の山田川や万江川が氾濫して多くの命が奪われています。人吉市街地を襲った大洪水は球磨川からでも川辺川からでもなく合流点でつくりだされたものでした。合流点の直上の低地は丸太の集積場となっており、膨大な丸太が貯木されていました。洪水によってそこから流れ出した丸太が流木となって第四橋梁にたまりダム化し、その後崩壊したのが要因と考えられます。
既存の治水ダムも豪雨時にはダムを守るために緊急放流を行い、かえって下流域に洪水災害を起こす危険性があるものです。災害を防げず清流も維持できないものに多額の税金をつぎ込んで新たに造る価値があるのか、よくよく考える必要があります。
球磨川と言えば、私が住んでいる宇土市を始め、宇城市や上天草市の上水道の水源です(水に恵まれないがゆえに半導体工場やデータセンターの立地進出がない、乱開発リスクが少ないというのがメリットではあります)。下流の八代市から上天草市までは実に122kmに及ぶ送水管でつながっており、まったく縁がないわけではありません。この水の恵みに関心を持ち続けたいと思います。
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