日別アーカイブ: 2025年3月9日

藤原氏はワイルドだろ

佐藤信くまもと文学・歴史館長による講演「藤原広嗣の乱」を昨日聴講してきました。8世紀の藤原氏族によるワイルドな政権奪取闘争をめぐる期待通りの痛快な内容でした。昨年のNHK大河ドラマ「光る君へ」は藤原道長が権勢をふるいつつも「女性活躍」の先触れ的な優美な平安時代を描いていましたが、今回の講演はそれより前の奈良時代の世界ということになります。広嗣が排除しようとした玄昉や吉備真備の人物像を含め、大河ドラマに相応しいもっと絵になる事件が豊富です。NHKさんももっとこの時代に目を向けたらいいのにと思います。講演を聴いていると現代に通じるトピックがいくつもあるものです。
以下はランダムなメモなので、テキトーに読み流してください。

・乱の背景には感染症流行…広嗣の親世代の藤原四兄弟は、九州から畿内へ広がった天然痘により、全員同じ737年に没しています。そのことが、次世代の焦燥・危機感を生みました。
※以下は講演とは別の話です。ゲノム人類学でわかってきたこと。
・これまでにゲノムが調査された縄文人骨のDNAは、みんな飲めるタイプで、飲めないタイプは、大陸で生まれた人々に分かれる。
・お酒に弱い遺伝子変異は、中国南部の揚子江下流あたりから同心円状で広がっていて、ちょうど水田農耕が広がった地域とほぼ一致する。東アジアではたまたまお酒が弱い方が有利になり、お酒に弱い人が増えた?
・農耕の開始によって食料の供給が以前より良くなると、生き残る人の数も増えて人口が増加し、人口が増えると感染症が蔓延しやすくなる。感染症に対する抵抗性とお酒に弱いことの関連が考えられる。
・お酒を飲んだ後にアセトアルデヒドが血中にできて、顔を赤くしたり、気持ちが悪くなったりする。アセトアルデヒドは人間にとって毒だが、血液に感染する原虫と呼ばれる寄生生物にも毒だという説がある。
・現時点のゲノム全体でわかっていることは、畿内(京都に近い、かつての山城・大和・河内・和泉・摂津の5か国のこと)の人が一番大陸に近いDNAを持っている。

・最新の通信手段と情報操作・心理戦の登場…7世紀の白村江の戦いでの敗戦により大宰府管内での軍団兵士動員の通信手段として烽火(のろし)が整備されましたが、これを実戦で初めて利用したのは広嗣の乱。官軍が広嗣を「逆人」と指摘する情報ビラ(伝単)を使用して心理戦を仕掛けました。
※広嗣は敗れて済州島へ逃れ、さらに西の唐を目指しますが、風に戻され五島列島へ漂着。捕らえられ斬刑に処せられます。8世紀から怨霊説が登場し、陰謀論者界隈の信仰対象となります。

・唐留学組の玄昉や吉備真備を重用した聖武天皇は異国大好きで「国家仏教」推し?…741年「国分寺建立の詔」、743年「大仏造立の詔」
※744年、聖武天皇唯一の男子として有力な皇位継承候補であった安積親王(外戚に橘氏をもち、大伴氏・佐伯氏が後見した)が死去。藤原仲麻呂による暗殺説もある。