日別アーカイブ: 2024年9月7日

「お出かけ知事室」質問草稿

熊本県民が知事へ直接質問できる機会として始まった「お出かけ知事室」が、地元の宇土市で9月21日に開催されます。当初6月23日に開催予定されていたものが、3か月後に延期されたので、質問者として登壇予定の当方も質問内容を順次更新しています。本日現在の草稿は以下の通りです。
知事職は、県政運営にあって絶大な権力を有しますが、中にはパワハラやおねだりで県政を停滞させながら、「道義的責任が分からない」と公言する不適格な知事もいます。お互い原稿の朗読会にしない時間にしたいと思います。

本日質問するテーマは6月初めに出したときと同じ水俣病被害者救済についてですが、その後の動きも加味して伺いますので、よろしくお願いします。
本年5月、水俣市で開かれた水俣病被害者慰霊式後の環境大臣との懇談会のマイクオフ事件を受けて、今も救済から漏れて死を待つだけの多くの被害者が現にいることが明らかになったかと思います。その後、患者団体との懇談を通じてわずかな離島加算やこれもわずか500人未満の住民を対象にした試験的な健康調査を2年以内に実施する予算要求が環境省から行われたことは、承知しています。ですが、被害者が要望することとはずいぶんズレがありますし、まだ議論が進んでいない課題が山積しています。
まず、知事選前の本年3月、水俣病の患者・被害者計7団体でつくる連絡会が出した公開質問状に対して当時の木村候補は、「国の患者認定制度の見直しは求めない」「公害健康被害補償法で対応し、特措法での救済漏れには対応しない」「県としての健康調査の実施は考えない」旨の回答をしました。再懇談同席以降の知事の発言に接しても、どうも今も知事就任前の考えから変わりないように見受けます。私は、この3点の見直しに向き合わずして、今後患者団体との協議機会を増やしても信頼関係を築けないし、認定患者の処遇改善や地域振興も大切ですが、なんら根源的な解決策にはならないと考えています。
次に、個別具体的に指摘させていただきます。1つ目は公健法での患者認定条件が不当に厳しいという点です。医学的には食中毒症の一つである水俣病か否かの判別はシンプルです。原因食品である汚染された不知火海産の魚介類を食べ、手足の感覚障害など関連症状のいずれかがあれば患者と言えます。環境疫学の知見によれば、メチル水銀汚染地域の寄与危険度割合を用いてメチル水銀食中毒症との因果関係を推定するのが国内外で確立したルールです。たとえば水俣市の寄与危険度割合は99%ですから、汚染地域で症状がある人は100%患者認定して医学的に問題ありません。そうしたルールに無知な委員だけで構成された審査会が開かれていることも問題です。分野は異なりますが、国連難民高等弁務官事務所の「難民認定基準ハンドブック」に記された有名なフレーズ「認定の故に難民となるのでなく、難民であるが故に難民と認定されるのである」に近い考え方です。被害者を診るのではなく補償負担のことばかり加害者たちが脳裏に描いているので、認定が歪められているのです。まずこの見直しに向かっていただきたいですが、どうですか。
2つ目は特措法での救済漏れの件ですが、行政処分ではないとされて行政不服審査の機会がないですし、裁判では後から救済を求める被害者に除斥期間の適用を加害者が主張して、著しく正義・公平に反する姿勢を続けています。これは後から被害に気付いた人に救済を求める権利はないと言っているようなものです。すでに除斥期間の適用を認めない判決もありますし、やはり除斥期間が争点になった旧優生保護法訴訟では最高裁判決後に首相が適用の主張を撤回しました。県民の生命と財産を守る立場にある知事なら、このような不正義・不公平な行動を即刻取り下げるべきだと考えますが、どうですか。
3点目の健康調査の件ですが、国が2年以内に開始する予定の検査手法では1日最大5人しか検査できません。だから予算要求でも500人未満分の1億5100万円に過ぎませんでした。一方で国水研の検査に使う脳磁計の更新に4億4000万円も充てるとかバランスを欠いています。汚染地域居住歴のある人数を47万人とすると、この方法では257年かかるというふざけた話で、やる気のなさしか伝わりません。福島第1原発事故後に福島県が202万人に行ったような調査を本県独自でも実施すべきです。全容を明らかにしないまま手当てすべき予算を組まずに国民・県民を切り捨ててきたのが、これまでの国政・県政の流れです。県民に寄り添うなどと口先だけのポーズは止めて、だれひとり取りこぼさない救済に向けて健康調査を全力で実行いただきたいですが、どうですか。
以上、3点について明確に回答をお願いします。