日別アーカイブ: 2022年7月5日

移民と大学教育

引き続き『テクノソーシャリズムの世紀』を読んでいます。改めて感じるのは、未来を語る前提として過去を知っておかねばならないということです。たとえば移民問題をどう捉えるかですが、歴史的に見て移民を積極的に受け入れた地域ほど経済成長を果たしたのは事実です。米国のリーディング企業の創立者やCEOには多くの移民の人々がいます。米国の前の大統領はしばしば移民を攻撃する発言を行いましたが、米国建国以降に限っても国内人口における外国生まれのシェアは一時期を除いて15%程度のラインを保っています。前大統領自身も先住民族ではないので、移民の子孫であることに変わりはないのですが、歴史に無知な人はこうした偏見に迷い込みがちです。移民の存在は個々の企業レベルでも文化と生産性を向上させます。高等教育においてもグローバル化は国を潤すという結果が出ています。その意味で高等教育機関そのものは産業としても魅力的なのですが、グローバル化に対応できない質の低い大学があるのも事実です。世界有数の資産家であり南アフリカ出身のイーロン・マスク氏は自身の5人の子どもを当初はロサンゼルスの英才教育学校に通わせていましたが、アド・アストラという新しい学校を作り、自分やスペースX職員の子どもたちをそこで学ばせることをしています。そのプライベートスクールには学年がなく、体育・音楽・言語の授業がありません。ヒトの言語はテクノロジーで翻訳が即時にできるので、学ぶべきはマシンの言語というわけです。これには反論があるかもしれませんが、マスク氏が人材に求める能力は、標準的な大学では得られないという考えが根底にあります。実際、アップルやグーグル、テスラ、スペースX、バンク・オブ・アメリカといった企業では、大学卒の要件を採用条件に課していません。大学を卒業しているかどうかではなく、それ以上の高度な能力を有しているかを見て求めているということなんだろうと思います。