日別アーカイブ: 2020年11月18日

元法相名のレアな委嘱状が記念に

現在は小菅に身柄が置かれている元法相名で昨年10月1日、人権擁護委員を委嘱されてきましたが、今年末をもっての辞任意向の届けを出しました。実際に委員に就任してから感じることは、この制度自体が国民の人権擁護のためには実効性に欠けた存在であるということでした。
日弁連が昨年10月に開いたシンポジウム資料からの参照になりますが、まず法務省の人権擁護活動を担う体制は、以下の通りになっています。法務省設置法第2条は「人権の擁護に関する事項」を法務省の任務とし、同省にあっては人権擁護局がその職務を担当しています。法務大臣の下に人権擁護局、全国8法務局に人権擁護部、その下に42地方法務局の人権擁護課があり、職員定数は約220名(2018年度)です。人権擁護行政は「人権侵犯事件の調査及び情報の収集」「民間における人権擁護運動の助長」「人権擁護委員に関する事項」を法務局及び地方法務局の所掌事務としています。本省から地方法務局を通じ、人権擁護行政に従事する職員はその人事キャリアの一過程として人権擁護部門に配置され、ローテーションにより他の部門に異動するのが通例です。地方法務局・支局・出張所では人権擁護課の職員は他の部門の職務と兼任していることも稀ではありません。そういうこともあって、人権委員会設置法案の動きを知っている職員はいても、国際人権法では常識である国内人権機関については知らない職員も多いようです。人権擁護委員の選任についても同様のことがいえます。法務大臣が人権擁護委員法に基づき委嘱する人権擁護委員は、「人権侵犯事件につき、その救済のため調査及び情報の収集をなし、法務大臣への報告、関係機関への勧告等適切な処置を講じること」を職務とし、各市町村から推薦を受けた民間人が委嘱されます。定員は1万9,844人(2018年度)、実員は約1万4,000人であり、給与の支給はない名誉職です。出身は定年退職した学校長や行政従事者、僧侶などが多く、社会階層的にも人権侵害を認知する立場の人から遠い人が多いようです。
法務省の人権擁護活動は、人権侵犯が認められた場合でも、措置は加害者の説得、指導にとどまり、侵害行為を直接停止・是正させる権限はありません。また、現に行われている法律、行政などに関し、政策提言する権限は当初から有しません。現在の人権擁護行政について、法務省自身も、「人権救済等に必要な専門性や経験を有する人権擁護委員が必ずしも十分に確保されていないため、活動の実効性にも限界がある。」と認めている記録がある通り、パリ原則が設置を求める国内人権機関と比較すると、現行の体制・制度は人権を擁護するには無能無用と評価せざるを得ないのが現状です。