日別アーカイブ: 2020年8月2日

人権問題は国内問題ではない

各種国際人権条約における国際人権基準は普遍的に実現される人権内容を明示しています。地球上のどこにいても、人は人である限り、同等の価値を持ち、同等の取扱いを受けるのが国際人権法の理念となっています。
ところが、現実の世界は、地球上のどこにいるか、あるいはどこの国民であるかなどによって保障される人権の内容が異なっています。その理由は、それぞれの国家の国内法が異なるからです。ただし、国家は締約した国際法を遵守する義務がありますから、その国内における人権侵害について条約機関から報告があるとか、他の国家から通報を受けることで、事態が改善することがあります。いま一つは個人による条約機関への通報です。国連公用語の6か国語のいずれかで行う制度があります。
日本の場合、戦後、さまざまな国際人権条約を批准してきましたが、個人通報制度の導入を定めた各条約の選択議定書についてはすべて未批准となっていて、個人にとっては国内で救済されないと道を閉ざされることとなりかねません。その意味で、けっして日本は人権保障の点では世界をリードしていないといえます。
これがないと、日本国民が国外でその国内において人権侵害を受けたときにも同様の不利益をもたらします。かつて日本人のツアー客がマレーシアでスーツケースを交換させられて知らない間にヘロインの運び屋に仕立てられ、オーストラリアに入国したため、有罪判決を受けたメルボルン事件というものがありました。取り調べや裁判の過程で誤訳の多い通訳があてがわれたことが、不当な有罪判決につながったと、これを救済するためにオーストラリアでは導入されている個人通報制度が活用されました。通報そのものは却下されましたが、大々的に報道されるところとなり、日豪の政府が動き、4人が仮釈放されています。日本にはこうした国際法がからむ事件に対応できる法律家がほとんどいないというのが現状ですし、法務省内の人権擁護局においても専門家はほとんどいないと思われます。
もともとアジアは人権擁護後進地域ですから、日本国民が旅行をする上でもそうした事情を知っておく必要があります。ですが、アジアでは例外的に韓国では個人通報制度が導入されています。同時に日本においても法律家を自称するなら国際的に通用する人材が輩出されることを望みます。