宇城市内で開催中の戦争展を2つ観覧してきました。以下は、その感想メモです。
(一社)くまもと平和ミュージアム設立準備会主催「戦後80年 うき戦争の記憶展 ~戦時下の暮らしと文化~」
会期は12月7~14日まで、イオンモール宇城のセンターコートで開催されるという情報を宇土高校のブログで知り、初日にさっそく訪ねてみました。高校のブログには同高の生徒がボランティアで会場に入っているとのことでしたが、11時台に立ち寄った際にはその姿はなく、展示スペースが予想以上に広い割に来場者はほとんどなく閑散としていました。展示品の多くは宇城市在住の退職教員の方が所蔵する戦時下の子ども向け出版物やおもちゃでした。何度か目にしたことがある資料がほとんどでした。
出品者の意向としてできるだけ多くのコレクションを来場者の目に触れさせたいのだろうと思いましたが、パーティーションに所狭しと掲出されてあり、雑然とした感がありました。資料の解説文の文字が大きい反面、サイズもA4と大き過ぎて、資料より目立ち過ぎていました。資料の並びも時系列なのかテーマ別なのか分かりかねました。
また、タイトルに「うき」と入っているので、地元の資料展示に重きが置かれているというイメージで来場しましたが、松橋空襲などの資料は会場奥の隅の方に展示されており、その点でもちぐはぐ感がありました。
このように国民をある方向へ追い込んでいった戦時下の社会の空気を伝える展示はたいへん重要ですが、あまりにも見せ方に工夫が足らず惜しい気持ちがしました。
ひとつ儲けものだったのは、この会場で宇城市立郷土資料館の企画展の案内チラシを得たことです。その足で行ってみることにしました。
宇城市立郷土資料館「終戦80年企画展 モノが語り継ぐ戦争」
この資料館は、宇城市豊野支所近くにある施設で、今回初めて訪ねました。入館は無料で私以外に来館者はなく、貸切状態でじっくり観覧できましたし、展示方法や解説も工夫が凝らされていてコンパクトでしたが、たいへんためになる施設でした。
こちらの松橋空襲の展示では、郷土誌『燎火(かがりび)』の第5号(1993年3月発行)・第13号(2006年3月発行)・第18号(2011年3月発行)掲載の証言手記が読め、たいへん実相を知るうえで役に立ちました。同誌を読んでみると、宇城市松橋町出身の故松浦豊敏氏の寄稿などもありましたし、市の文化財審議員の中に私の小学生時代の恩師が就いていたこともわかりました。なお、同誌バックナンバーは宇城市文化課において1冊500円で販売しているとのことです。
1945年8月7日の松橋空襲については、そのうちの1機(米陸軍中型爆撃機B25)が、現在の八代市鏡町の氷川河口に墜落し、搭乗員5名が捕虜となり、地元住民によって傷害を負わせられています。しかも、8月15日に捕虜虐待の証拠隠滅(表向きは日本の市民に対する無差別爆撃の罪)のため、福岡で日本軍(戦後これにかかわった軍人はB・C級戦犯として起訴)によって処刑されています。これらの日本側の加害の歴史も展示解説で触れられていました。貴重な資料も適切な説明があってこそその教訓が伝わります。
これもついでに。
12月5日のNHK総合で「時をかけるテレビ 池上彰 “医師の罪”を背負いて 九大生体解剖事件」という番組がありました。もともと戦時下の医師の倫理観に迫るドキュメンタリーとして2015年に放送されたETV特集「“医師の罪”を背負いて~九大生体解剖事件~」を取り上げた番組で、生体実験の現場に立ち会った当時19歳の医学生だった故東野利夫さんが、生涯をかけて罪と向き合い、語り継ごうとした記録です。生体解剖事件の対象となったのは、戦時中に墜落した米軍爆撃機B29の搭乗員たちでした。その墜落後の捕虜の扱いについても自決に追い込んだ例もありますし、国際法に照らして危害を加えなかった例もあったと紹介されました。戦後、東野さんは唯一生き残った機長に会い対話していますが、その機長も無差別爆撃の体験を家族にも伏せてずっと苦しんできたことが明かされました。東野さんの母校・九大医学部に歴史館がオープンした当初の事件の扱いはあまりにも小さく同氏を落胆させましたが、近年になって同氏提供の資料も含めて大きく取り上げるようになったといいます。歴史は多面的に見なければいけないことを感じました。
(熊本日日新聞ではこの事件に関連する「殉空に散る」が連載中です)
九大医学部出身関係者について言えば、12月6日のやはりNHK総合で放映された「新プロジェクトX 75万人命救った用水路~医師・中村哲 希望のアフガニスタン」で紹介された故中村哲さんの業績も凄いと感じます。本来このような人物がノーベル平和賞を受賞すべきでした。米国大統領は、同賞を切望するただの破廉恥な人物に思えます。せいぜいFIFA平和賞止まりであってほしいものです。
https://www.lab.med.kyushu-u.ac.jp/rekishikan/
https://www.web.nhk/tv/an/tokikaketv/pl/series-tep-WQGK99QWJZ/ep/2L7J19XXJG
https://kumanichi.com/articles/1932457
https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-P1124VMJ6R/ep/8XWVR96MXN