森下香枝著『ルポ無縁遺骨 誰があなたを引き取るか』(朝日新聞出版、1600円+税、2023年)を読んでいるところです。ちょうど昨日のNHKニュースでも「『相続人いない財産』過去最多768億円が国庫へ 昨年度」(※)と報じていました。現在、身元がわかっている人でも相続人がいない方が亡くなった場合、その方の葬送をどうするのか、残された財産をどうするのかが問題になっていて、その対象人数と遺産額は年々増えているようです。また、そうしたケースの場合に一線で対応にあたるのは市町村行政ということになっていて、その負担もたいへん重いものになっています。もちろん、そうならない手立てとして相続人がいない方が遺言書で遺贈先や遺言執行者を定めたり、死後事務委任契約を結んでおいたりする方法もあります。専門家はそういって済ませますが、本人がよほど終活に関心を持たない限り、そうした準備を行う人は増えないのではないかと思います。実際、孤独死者の平均年齢は62歳と意外に若いそうです(p.109 日本少額短期保険協会など2022年11月発表「孤独死現状レポート」)。
死は予期せずに到来するわけですから、それを前提に市町村に財政的負担をかけない葬送システム・遺産活用の制度設計があっても良さそうなものと考えます。市町村が、引き取り手のない死者の埋火葬のために適用する法律としては、葬祭扶助(生活保護法)と墓地埋葬法の2つがありますが、適用比率は9:1と極端に前者に偏重しています。そのカラクリは以下のようになっています(p.85-86参照)。
葬祭扶助…費用は国が4分の3負担、地方公共団体は4分の1で済む。
墓埋法…市区町村が全額立替払い。遺族が弁済請求に応じない場合は都道府県に弁済請求できる建前だが、支払ってもらえず市区町村が結局かぶるケースが多い。
死をめぐる費用負担の自治体ごとの違いは他にもあって、異状死の検案・運搬の費用が都内ほかでは公費負担ですが、神奈川県内だと遺族が全額負担となります。
また自治体の違いではなく地域の違いとして遺骨を骨つぼに入れる収骨のスタイルの情報も興味深いものがあります。東日本では「全収骨」、西日本では「部分収骨」のため、骨つぼの大きさも東日本の方が大きいようです。
あとは未整理のメモです。
横須賀市…「わたしの終活登録」事業。それをモデルに豊島区社協なども同様の事業を提供。
Casa…「家主ダイレクト」(孤独死保険付きの家賃保証サービス)
本寿院…ゆうパックで送骨する遺骨ビジネス。費用は1柱3万円。年会費・管理費は不要。
NPO法人つながる鹿児島…「つながるファイル」
長野市…「『おひとりさま』あんしんサポート相談室」。厚労省の「持続可能な権利擁護支援モデル事業」の指定を受けている。九州では古賀市が指定されている。
大田区…「見守りキーホルダー」(愛称:「みま~も」)。厚労省の「地域包括ケアの実現可能なモデル事業」の指定を受けている。都内各地で導入が進んでいる。九州では、日田市や小城市が導入済み。
いろいろ事例を知ると、自治体間の取組み格差を感じます。担当者の問題意識や政策実現能力の違いがあるかもしれません。それと財政負担能力の問題です。国庫に帰属する遺産を基金として国が管理して葬送や死後事務について発生する費用を市町村へ渡す、あるいは遺留金を金融機関から解約引き出す権限を市町村へ持たせる仕組みを構築した方が効果的にも思います。
先日観た映画『PERFECT DAYS』の主人公・平山の場合は、妹(または姪)が相続人となってくれる可能性がある続柄設定でしたが、「ほんとうにトイレ掃除(の仕事)をやってるの?」と兄に問いかける、裕福な妹がわざわざ面倒を引き受ける可能性は低く感じさせるところもありました。相続人がいてもアテにはならないという社会を前提に福祉政策を考える必要がありそうです。
(※) https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231224/k10014298341000.html
「遺言相続」カテゴリーアーカイブ
家族法の知識の再確認
まだ読み始めですが、呉明植著の『伊藤塾呉明植基礎本シリーズ9 家族法(親族・相続)』(弘文堂、2300円+税、2023年)は、自分の知識を再確認するために役立ちそうです。著者を始めとする伊藤塾講師による講義には、日本行政書士会連合会中央研修所のVODでもたびたび視聴したことがあり、馴染みを覚えていましたし、もともと司法試験受験生向けに書かれた本なので、判例・通説に基づいて重要部分が図解を交えながら丁寧に解説されています。せっかく学習しても体系を正しく理解していなければ実務にも対応できない訳で、あやふやな記憶がクリーンアップされていく感覚はたいへん心地よいものです。それと、法律自体も年々アップデートされています。本書は2022年12月の親族法改正(例:女性の再婚待機期間がなくなる)にも対応しています。今後たとえば同性婚が法的に認められていけば、同性カップルの財産や連帯債務、債権者代位権などについても見直しが迫られます。現在地を理解することが、先にある目標地の適切な設定の議論にもつながります。
本書内の事例記述で登場人物に「山田太郎」の名前がありましたが、婚姻中の「不貞行為」の解説でも使用されておれば、なお学習者の理解が進むのではないかと思ったことでした。
役には立つが楽しくはない
仕事柄、法律関係の書籍(今読んでいるのは写真の本)を手にすることがありますが、紛争解決に役立つ知識の習得は、面白く感じる一方で読んでて楽しくはならないなという気持ちになります。善人が必ずしも権利を保護されるとは限らないわけで、良からぬことを企む小賢しい人には愉快なのかもしれません。こうした輩を相手にする法曹人には同情します。
民法改正について学ぶ
熊本県宅地建物取引業協会の会員ではありませんが、宅地建物取引士証保持者ということもあって、同協会が一般向けに受講を開放している研修会にこれまで幾度か参加したことがあります。2月2日に熊本市中央区で開かれた研修会では、「民法・不動産登記法の改正について」がテーマでしたので、聴講してきました。90分ほどの講義でしたが、具体例に即して法務省資料を参照しながらの解説でしたので、たいへん理解しやすい内容でした。早いものでは本年4月1日施行の法律制度もあります。特に相隣関係の取り扱いの変更は、身近な暮らしの中での知っていて損はない情報です。売却が面倒だった共有土地の処分も条件次第ですが、いくらか行いやすくなりそうです。下記に項目と施行日を示しておきます。
・相続登記等の申請義務化について(施行日2024年4月1日)
・形骸化した登記の抹消手続きの簡略化(施行日2023年4月1日)
・相続土地国庫帰属法について(施行日2023年4月27日)
・民法の相隣関係の見直し(隣地使用権に関する改正、ライフラインの設備の設置・使用権、越境した竹木の枝の切取り)(施行日2023年4月1日)
・民法の共有制度の見直し(共有物の変更・管理に関する見直し、共有物の賃貸に関するルール、所在等不明共有者の不動産の持分の取得、所在等不明共有者の不動産の持分の譲渡)(施行日2023年4月1日)
・民法財産管理制度の見直し(所有者不明土地・建物管理制度)(施行日2023年4月1日)
・相続制度の見直しについて(施行日2023年4月1日)
熊本市空き家対策セミナー・相談会
「熊本市空き家対策セミナー・相談会」が下記の内容で開催されます。
セミナーでは、我が家を空き家にしないための方法や相続 ・ 税金等の対策について、専門家によるアドバイスが聴けます。
空き家をお持ちの方の悩みについて、登記、相続、税金、不動産など専門の相談員が対応する無料相談会も開催されます。
熊本県行政書士会からは、小職が相談員として対応します。
空き家についての備えを考えている方、現に空き家をお持ちでお悩みの方などは、ぜひご参加ください。
日 程 令和4年11月19日(土)【セミナー】 13時00分~15時00分 【相談会】 15時15分~17時15分
会 場 熊本市中央公民館 7階ホール(中央区草葉町5-1 白川公園内)
定 員 【セミナー】 50名 【相談会】 28組 ※先着順
費 用 いずれも無料
対 象 者 熊本市民もしくは空き家所有者 ※いずれにも該当しない場合は、ご相談ください。
申込期間 10月25日(火)~11月17日(木)
申込方法 以下のいずれかの方法でお申し込みください。
方法(1) 空家対策課(096-328-2514)にお電話で申込み ※電話申し込みの場合は、口頭で相談内容等を聞き取りします。
方法(2) 申込書を空家対策課へ提出 ※申込書の提出は、11月17日(木)必着です。※申込書の受理後、空家対策課からの電話連絡をもちまして受付完了とします。
ゆうちょ銀行熊本支店で無料相談
熊本県行政書士会主催による下記の行政書士による無料相談会へ相談員として参加します。最近オープンした熊本屋台村近くの熊本城東郵便局内で行っています。
日時:6月16日(木)10~15時
場所:ゆうちょ銀行熊本支店 熊本市中央区城東町1-1
写真は、台湾の士林夜市の店先(2018年7月撮影)。
すべてはリンクしている
午前中は農地関係、午後からは高齢者福祉関係の相談を受けました。いずれも別々の課題ですが、開発や農業後継者問題、認知症介護、境界トラブル、高齢者ドライバー問題など、さまざまな地域課題に影響あることを感じました。行政の窓口は問題を小分けして別々にしか対応できませんが、市民の要求は総合的に解決できることにあります。相談に応じる方も的確に問題を理解する能力が求められているといつも思います。写真は、1997年9月撮影のものです。桂林の宿泊先ホテル前の公園で高齢者たちが朝から麻雀を楽しんでいました。認知症対策としては優れているのではと思えました。
覇権のファンダメンタル
今月前半の読書は『ヨーロッパ覇権以前』で楽しみました。栄代から元代をはさみ明代初期まで遠くは東アフリカまで大きな海軍力を伴って交易の海洋進出を果たした中国の盛衰について考察した部分は、現在に通じるものがあって面白かったです。原書が出版されたのは1989年ですから、現在の世界に占める中国の影響の大きさとは異なる頃に書かれた点でも、興味深く思いました。ただ、著者の中国に関する記述は言語の違いもあるのか、間違いも多く訳注によってかなり補正しています。交易のグローバル化による感染症の流入により、ひどいときは中国河南地域の人口の9割近くを失う危機もあったとみられています。国内の経済危機が海洋進出どころではない事態を招き、その後、力の空白にヨーロッパのポルトガル、次いでオランダ、イギリスという具合に海洋進出があり、近代世界システムが形成されていったというのが、著者の見立てとなります。歴史上、覇権の基礎要素として海洋交易と感染症対策があったということを強く印象付けられました。
あと、昨日気になったニュースとしては、山口県においての多額の給付金誤入金事件で返金を求められた若者の所在が不明になって、町が民事訴訟に出て相手方の氏名を公表する事態となった問題です。訴えの中でこれまた多額の弁護士費用も上乗せされていましたので、行方をくらましている誤送金されたばかりか借金を無理やり追わされたようなものです。しかし、この若者のように普段手にしたことのない多額の現金を手にすると、ここまで後先の損得勘定がわからなくなるものなのでしょうか。逃げ回るというストレスを抱えているでしょうから、どんな心理状態なのか、心配です。もっとも、多額の現金を預かっているとおかしくなる例は山口の若者に限りません。たとえば、成年後見人を務める弁護士が今回の倍以上の預かり金を競馬につぎ込んでいたという事件が本県でもありました。法律の専門家でもこうした常識外れの行動をとる人は珍しくありません。いわゆる士業専門家の中には若い頃に資格取得に専念するあまり会社勤めなどの社会人経験がなく、身だしなみが疎かなことはもちろんのこと、人付き合いでも独善的な人が結構います。こういう輩は人から忠告されるとコドモのように憤慨して反論するので要注意です。たいていの大人は、こんな場合、当の本人を刺激しないように口をつぐんでいるだけですから、当の本人側は自分が周囲からどう見られているか普段気づいていないのが実態なのです。いつの世もそのように動いているものです。ともかく成年後見人も家庭裁判所からハズレの専門家をあてがわれることがあるので、それを利用しないで済む対策を講じることが重要かもしれません。
写真は、ファンダメンタルな話の投稿をしていたら、パンダメンタルな気分になったのでロンドン動物園で見たパンダです(1994年1月撮影)。海外では、このロンドンと天津で見たことがあります。
空き家に関するセミナー・相談会等
熊本市主催の「空き家対策セミナー」が熊本県が18日に「まん延防止等重点措置」の適用を政府に要請したことを受けて、開催を延期することと致しましたのでお知らせ致します。
1月29日(土)13:30~16:30、熊本市中央公民館において開かれます。専門士業団体の会員による相談会も併催され、行政書士会からは当職が相談員として出席予定です。
https://www.city.kumamoto.jp/hpKiji/pub/detail.aspx?c_id=5&id=28240&class_set_id=1&class_id=60
熊本城東郵便局で無料相談
原則毎月第3木曜日(祝日等の場合、その後最初の平日)の10:00~15:00、ゆうちょ銀行熊本支店1F(熊本市中央区城東町1-1 熊本城東郵便局)において熊本県行政書士会会員の行政書士による無料相談会を行っています。今月(7月)は、15日(木)10~15時に開催されます。当日は担当相談員として参加します。写真は投稿記事と関係ありません。
遺言を遺す文化
遺言・遺言執行・死後事務委任等をめぐるWEB研修を受講した際に、講師の方が、日本では大まかにいえば死亡者の約1割が遺言書を作成していますが、英国では55歳以上の64%(英国弁護士会報告書、2014年10月)が遺言書を作成していると紹介していました。なんでも英国では、中世においては遺言を遺さずに死亡することは魂の救済を受けずに死亡することを意味し、聖地への埋葬ができず、財産を領主に没収されるという事態を招き得る、不名誉かつ忌むべき深刻な事態であるという伝統があるようです(『民事月報』2018年11月号)。英国流の考え方では、幸い私は昨年7月に自筆証書遺言書保管制度を利用しましたので、名誉ある死を迎えられそうだと思いました。
それはともかく先に亡くなる可能性の高い人はできるだけ遺された人へ迷惑はかけたくないものです。手間をかけずに相続ができることは、残された人の日常生活にとってどんなに楽なことかと思います。
一方、講師は付言において相続・遺贈を受けない利害関係者の感情を刺激する内容は厳に慎むようにクギを刺していました。遺言者の真意がどうであれ感情的な言葉は盛り込まないのが流儀ということになります。私の場合は、一切付言を入れませんでした。
遺言書に限らず先に逝く人は争いにならないように言葉は発したいものです。
明日は熊本県行政書士会の市民公開講座
明日、私の所属団体の熊本県行政書士会主催による、行政書士制度70周年記念の市民公開講座が、下記の通り開かれます。参加無料・予約不要です。
日程:令和3年2月20日(土)
時間:13:00~受付開始 開会13:30
内容
第一部 【遺言のすすめ】講師:橋本修明公証人
第二部 【自分の人生をもっと楽しむライフデザイン】講師:村上美香氏
終了後 行政書士による無料相談会
会場:熊本城ホール内シビックホール
*コロナ対策に万全を期して開催されます。
どう調整するのか
一昨日の朝日新聞に、イスラム教徒専用の土葬墓地を大分県内に整備する計画について地元住民の反対で滞っていることが載っていました。かつて国内では火葬よりも土葬が主であったわけですが、宗教上の理由でイスラム教徒は火葬を嫌います。イスラム教といえば世界で最も信仰する人口が多いわけで、日本国内でも教徒が増えていけば、土葬墓地需要は確実に増えます。こればかりは避けられません。今回は大分県内で計画が持ち上がりましたが、適地探しが必要になると思います。写真は投稿と関係ありません。
コロナ禍の葬儀
コロナ禍の葬儀に参列しました。正確には赴いただけでした。故人の足跡を知る機会もなく、残念でしたが、昨今の葬儀運営はこうしたものなのかもしれません。葬儀場でも感染防止にばかりにとらわれるのではなく、もっと工夫をしないと遺族にも気の毒だと思いました。
初めての問合せ
経営している法人では特例で7月と1月に所得税の納付を行っています。設立10年目になるので、決算後に取締役の重任の登記をしなくてはならないことを期首に意識していましたが、今年7月の納付手続きは失念していました。もちろんこういうことは初めてで、それを知ったのは昨日、国税局から届いた納付照会のハガキによってでした。思い返すと、7月上旬は豪雨関連のニュースに気が取られていて足元の手続きが疎かになったようです。同時にその時期は自身の自筆証書遺言書保管制度の利用準備のため、地元の税務署と法務局が入っている庁舎へ足を運ぶ機会があったのにもかかわらずです。しかし、しっかり国税局は仕事をしているんだなと、感心しました。
相続についての研修受講
昨日、地元の法務局で相続についての研修を受ける機会がありました。主に最近ルールが変更になった制度についての説明でした。
まず、1点目は昨年7月1日より施行となった、「預貯金の払戻し制度」についてです。遺産分割前に相続人の資金需要に対応できるように、家庭裁判所の判断を経ることなく一定の範囲で金融機関に被相続人の預貯金債権の払戻しができるようになりました。しかし、注意を要する点があります。葬儀費用だけのために引き出すのであればよいのですが、引き出したお金を自分のために使ってしまうと、相続を単純承認したことになります。後日、プラスの財産よりも負債の方が大きかったことが分かり、いざ相続放棄や限定承認をしようと思っても、それはできません。ですので、この制度を利用する前に、被相続人の消極財産の有無や金額などを入念に確認しておく必要があります。払戻しは相続人が単独で引き出す前に必ず他の共同相続人の同意を取り付けるようにしてください。引き出したお金を葬儀費用といった遺産から支出しても構わないものの支払いに充てた場合は、必ず領収書を取っておいて、自分のために使ったのではないことを証明できるようにしておくことを勧めます。
2点目は、「法定相続情報証明制度」です。これは、3年前の5月29日からスタートした制度ですが、定着してきているようです。地元法務局管内の18歳以上の人口は9万人弱ですが、直近の3か月間で60件の利用があったということでした。被相続人の預貯金債権のある金融機関が多い場合はこの証明書を作成しておいた方が便利です。何枚もらっても無料です。
3点目は、今年7月10日に始まったばかりの「自筆証書遺言書保管制度」です。こちらは地元法務局管内で半月で3件ということでした。自筆証書遺言書ということで、高級和紙にしたためてこられた申請例があったようですが、スキャンすると紙のでこぼこの影が写るので避けてほしいということでした。遺言執行者に対する遺言者の死亡時通知は、来年の3月からの開始となるということでした。
自筆証書遺言書保管第1号で体験したこと
本日から申請が始まった自筆証書遺言書保管制度をさっそく利用し、地元保管所の保管番号第1号となりました。この申請は、法定相続情報証明制度と異なり、本人出頭主義がとられて代理申請は行えません。また当日いきなり申請窓口を訪ねても受け付けてはもらえず、ネットや電話で申請日時を事前予約する必要があります。初日ということでもあり、申請書の審査に1時間ほどかかりました。
今回実際に申請を行ってみて戸惑ったのは、申請書の入力(記入)についてです。申請書の項目の字面だけを追って入力すると、不要な部分まで埋めてしまう恐れがあります。なんだか特別定額給付金の受給申請で誤って「希望しない」にチェックを入れてしまいかねない様式を思い浮かべてしまいます。まず遺言者本人の記入欄で「遺言者が所有する不動産の所有地を管轄する遺言書保管所に保管の申請をする」のチェック欄と不動産の所在地記入欄があります。おそらくほとんどの遺言者は自身の住所地・本籍地と所有不動産所在地の法務局管轄が同一だと思いますので、先のチェック欄・記入欄は埋めてしまう恐れが多いと思います。住所地の管轄法務局に申請するのであれば、この欄は埋めなくてよいということが記入上の注意事項の別資料を読み込まないと理解できません。
次に、受遺者等欄というのも曲者です。一般に相続人は遺言により財産を受け取りますし、「等」とあるので、相続人の氏名・住所をすべて記入してしまいますが、これも記入上の注意事項をよく読むと、書かなくていいことになっています。この欄に書かなくてはならないのは、遺贈を受ける長男の嫁などです。相続を受ける配偶者や子らの氏名や住所を書く欄ではありません。
それでは、申請書において相続人の氏名や住所を記入する欄はどこかというと、「推定相続人を通知対象者に指定する場合」の欄になってきます。改めて認識したことですが、死亡時に遺言書が法務局に保管されていることが通知される相続人は1名だけです。全員ではありません。
遺言執行者を複数指定したとしても遺言者死亡時の保管通知対象となるのは1名だけです。
そのため、通知対象者である推定相続人や遺言執行者の住所が保管後に変更された場合は、その都度、遺言者あるいは成年後見人が変更を届け出る必要があります。もっとも、法務局では通知対象者に遺言者から保管証コピーを渡しておくように勧められました。
建物名欄のマス数が長ったらしいマンションだと収まらない短さでしたが、これは番地欄も使って埋めておけば何とか法務局で処理してくれるようでした。
最後に遺言書の様式についての注意点です。用紙はA4サイズとなります。天地左右それぞれに最低必要な余白の長さが定められています。財産目録は、ワープロソフトで出力したものでも構いませんが、すべてのページそれぞれに「署名」+「押印」+「通し番号/全ページ数」だけは自書が必要となります。
議事録に残すことの重み
本日から法務局における自筆証書遺言書保管制度の申請予約の受付が始まりました。マスコットは有袋動物のカンガルーです。さっそく朝から予約サイトから申し込みを行い、保管初日に申請をすることとしました。申請書の受遺者等の住所欄の建物名の記入マス数(字数)が少ないので、このあたりの処理はどうなるのか、実際に申請を行ってみてわかったことは、本投稿で触れていきたいと思います。
さて、昨日は、任期3年の農業委員会の最後の総会でした。私が務めている農地利用最適化推進委員の次期の承認も議題に上がり、承認された結果、私は次期も連続して委員に就くことが決まりました。その前に行われた農地法許可議案の審議では、2件の申請について事務局へ質問しました。一つは、個人住宅の転用許可申請では適正規模の制限があり、550㎡までしか許可されませんが、560㎡の転用面積の申請だったので、それは可能なのかという内容でした。事務局の回答は申請地には道路後退部分もあり、実際に敷地として使える面積は550㎡を下回るので許可可能という説明でした。もう一つは、単独所有の農地と持分2分の1共有の農地(転用面積も2分の1)の転用申請が1つの申請と出せるか、共有地の転用は他の共有者の同意も必要なので、別個の申請として出すべきではないか、あるいは共有地は分筆してから申請すべきではと質問しました。これについての事務局の回答は、共有地については前月に持分2分の1の移転と2分の1の転用許可を出しているので、4条許可の扱いとなり、4条許可と5条許可との2本の申請を5条許可の議案として1本で出せることを県にも確認したということでした。いずれも議案の字面だけを見ると、議案として上ることに疑義があるケースがあります。特に質問もなく、納得できる回答がなければ、議事録上で悪い先例を残すことになりますが、納得できる理由の説明が伴っておれば、公正な審議が行われたことになり、委員と事務局を護ることにもなります。任期の最後の方になってようやく委員らしい仕事ができたなと思いました。
自筆証書遺言書保管制度が7月10日から始まります
7月10日から法務局における自筆証書遺言書保管制度が始まります。保管申請は本人出頭主義となっていますので、士業者が代理するわけではありませんが、公正証書遺言書と比べて低料金で活用できる制度なので、遺言書の文案作成のお手伝いの機会はあると思います。私自身の遺言書も保管申請したいと思います。遺言書を作成するメリットしては推定相続人に対して遺言者の保有する財産の内容が明らかになるので、もれなく相続できる点だと考えます。遺産分割協議によって相続するやり方はもちろんありますが、そもそも被相続人の財産がどれほどあるのかないのか、ヘタするとマイナス資産はないのかさえわかりません。受遺者のことを考えたら遺言書の作成と保管はずいぶん親切な感謝される行動ではないでしょうか。
それぞれの働き方
岩波ブックレットの『新版 ひきこもりのライフプラン』を読み終えました。同書は2部構成になっていて、前半は精神保健学者の斎藤環氏による「ひきこもり」についての解説と「ひきこおり家族」を抱える家庭への支援あり方を示すものでした。後半は、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子氏による親亡き後のひきこもりの子のサバイバルプランを具体的に指南する内容になっています。
前半の部分では、ひきこもり症状について無理解なまま第三者が介入すると、たいへん危険だという感想を持ちました。無理解な第三者がたとえ支援の気持ちで介入すると、本人が負い目に感じている部分を逆なでする説教的な対応になりがちで、かえって助けにならないようです。まずは、家族が専門家と相談する関係が築けないと支援にはならないと感じました。
後半の部分は、ひきこもりの子が働かなくとも生活できる知恵の伝授なのですが、読んでて思ったのは、別にひきこもりの子を抱えていない家庭でも知っていて無駄はないなということでした。というのも、子が突然傷病で闘病生活や障害を負うことはありえます。現役世代であってもいつ休失業する状態に追い込まれることがあるかもしれません。大部分の人は年金生活、つまり働かずに暮らす生活を送ることを考えているわけですから、その状態が早く来ることはありえると考えておく方がいいと思います。
私が最初勤めた会社の経営者は、50歳になったら働かなくてもいいようにしなければならないと言ってました。私も当時は働くのは好きではありませんでしたから、早く働かずに済むようになるのならその方がいいと思い、経営者の言葉には賛成でした。
なぜ働くかといえば、楽したいから。それだったら、最初から働かないというのもありなのですが、楽をするには資産がないといけませんから、それを築くために働くというのが、私の働く理由でした。必要以上に働かないのが、自然だと考えます。
ただ世の中は働くことが美徳だし、70歳まで働けというのが政府の意思です。それに乗るのもいいですし、乗らないのもいいと思います。