8月25日、「旅名人の九州満喫きっぷ」を利用して佐賀県立美術館・佐賀県立博物館、福岡アジア美術館、大牟田市立三池カルタ・歴史資料館を訪ねました。当初の予定では、佐賀の次に北九州市立美術館へ行くつもりでしたが、佐賀滞在時間が延びたため北九州行きを止め、帰路途中にある大牟田へ代わりに寄りました。なんといっても普通列車(一部西鉄特急あり)乗り継ぎの気楽な旅でしたし、車中は読書の時間もたっぷりとれて充実した気分を味わうことができました。訪問先別に観覧メモを残しておきます。
「ジパング 平成を駆け抜けた現代アーティストたち」観覧メモ
「ジパング 平成を駆け抜けた現代アーティストたち」会場の佐賀県立美術館では、さまざまな作家の作品が展示されていましたが、今回もっとも注目したのは、山口晃の東京パラ輪公式ポスター「馬からやヲ射る」の制作に参加するに至った葛藤を、マンガ仕立てで表現された「当世壁の落書き 五輪パラ輪」(2021年)でした。山口作品としては、2019年NHK大河ドラマ『いだてん ~東京オリンピック噺~』のオープニングタイトルバック画として制作された「東京圖 1・0・4輪之段」が一般にも知られていると思います。私自身、東京パラ輪公式ポスター「馬からやヲ射る」については、大会そのものに関心がなかったせいかまったく記憶がありませんでした。ましてや、制作者が「毒まんじゅう=翼賛案件」とまで思い悩んでいたとは知りませんでした。結局のところ、制作に参加することで「真ん中で声を上げる」道を、作家は選びます。求められて表現する部分と求められなくとも表現したい部分がぶつかり合ったギリギリ感がありました。
ほかの作家の作品においても、当時東日本壊滅の危機に瀕した東日本大震災による東電福島第一原発事故に触発されたものが多数あり、時代が表現に与える力の大きさを感じました。そうした政治的メッセージを含む作品ほどやはり深みを覚えます。
なお、同館では、「吉岡徳仁作品特別展示」が併催されていて、同氏のデザインによる「東京2020オリンピック 聖火リレートーチ」やSAGA2024国スポ・全障スポで使用される炬火台及びトーチの写真パネルを観覧することができました。吉岡氏は佐賀県出身ということですが、こちらはどんな葛藤があったのかなかったのか気になりました。