どっちみち妖怪

八代市の博物館では、しばしば松井文庫所蔵の「百鬼夜行図」が展示されており、過去の展示会で見に行ったことがあります。この絵巻は、江戸時代の1832年、細川家の御用絵師矢野派の絵師によって描かれたもので、58種の妖怪たちが登場しています。熊本ゆかりの″アマビエ″は描かれていませんが、「ぬらりひょん」や「いそがし」、「どふもこふも」など、名称からしてユニークで現代にもいそうな妖怪が載っていて楽しい絵巻です。地方議会における公務員の虎の巻本には、答弁の際の有用な言葉として、「いずれにいたしましても」という枕詞があるそうですが、これは根拠理由の説明をぼかして結論だけ述べる際に使えるそうです。いわんとすることは、「どっちみち」という意味で、説明責任を果たしたくない議場内に巣くう妖怪たちが好むとされています。八代の妖怪絵巻はもともと松井の殿様が描かせたものでしたが、妖怪図鑑に名を借りた人間観察図鑑だったのではと思えます。